もの作りはかくあるべし! カラスは真っ白×植草航(アニメーション作家)の相思相愛MV制作秘話

札幌発の新鋭バンドと、『文化庁メディア芸術祭』新人賞に輝いたアニメーション作家の共鳴

インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作(2014/7/1)

ミュージックビデオの作り方は千差万別だと思うが、バンド側が楽曲についてのコンセプト文を作成したり、MVを受けて楽曲の手直しまで行うことは稀だろう。カラスは真っ白の最新ミニアルバム『おんそくメリーゴーランド』のリード曲となった“fake!fake!”のMVは、相思相愛のバンドと映像作家によって、細部までこだわりぬかれた作品だ。

札幌を拠点に活動しながらも、ウィスパーボイスのボーカルとバキバキのファンクサウンドというギャップが各所で話題のカラスは真っ白。2011年に『文化庁メディア芸術祭』で新人賞を受賞するなど、イラスト・アニメーション作家として注目を集める植草航。共に気鋭の若手として活躍する両者は、お互いの世界観に対し、どのように共鳴したのか。カラスは真っ白からボーカルのヤギヌマカナとギターのシミズコウヘイ、そして植草の三人で、MV制作の裏側について語ってもらった。

(植草さんの)『やさしいマーチ』を見たんですけど、キャラクターもかわいいし、色使いもきれいですごくいいなと思ったんです。(ヤギヌマ)

— 植草さんとカラスは真っ白のお二人は、もう何度か会われているんですか?

シミズ(Gt&MC):まだ初めてお会いしてから半年くらいで、しかも今日で2回目なんです(笑)。年末に大阪の『RADIO CRAZY』というフェスに出演したときに、植草さんがわざわざ見に来てくださったんですよ。

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シミズコウヘイ(Gt&MC)

植草:ちょうど関西の知り合いに会いに行く予定があったので、そのまま足を運ばせていただいたんです。僕は『かいじゅうばくはつごっこ』(2013年6月リリース)が出たくらいにYouTubeでカラスは真っ白を知って、CDも買っていたんです。

— もともと気になっていたんですね。どんなところに惹かれたんですか?

植草:なんか、音楽を聴いていると絵が見えてきて、面白いなと思いました。キーワードをつまんでいくような歌詞が印象的だったんですけど、そのなかでも一貫して絵がパッと浮かぶ世界観だったので、MVを作れたら楽しいだろうなと思っていたんです。

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植草航

— それが今回実現したわけですが、どんな経緯で植草さんにMVをお願いすることになったんですか?

シミズ:今回のミニアルバムを作ろうとしていたときに、次のMVは面白いものにしたいと思って、作っていただける方を探していたんです。それで植草さんのTwitterアカウントを見つけたんですけど、カラスは真っ白をフォローしていただいてたんですよ。興味が湧いてYouTubeにあがっていた『やさしいマーチ』という作品を見たら、もう衝撃を受けまして。

— 『文化庁メディア芸術祭』で新人賞を獲った作品ですよね。

シミズ:色使いから、動きから、世界観から、何から何までめちゃめちゃ最高だ! と。それで興奮しちゃって、メンバーの了承も取らずに植草さんにDMを送ったんです(笑)。

ヤギヌマ(Vo):私もシミズ君から教えてもらって『やさしいマーチ』を見たんですけど、キャラクターもかわいいし、色使いもきれいですごくいいなと思ったんです。あと、いい意味で「よく動く」なと思いました。オファーしたって聞いたけど、本当にやってもらえるとは思っていなかったので、決まったときはうれしかったです。

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ヤギヌマカナ(Vo)

— もう相思相愛だったんですね。実際の制作はどんな感じで進んだんですか?

植草:最初はどの曲にMVをつけるかみたいな話になって。

シミズ:どれをリード曲にしようか迷って、植草さんとも相談させていただいたんですよね。最初、“スカート・スカート・スリープ”にしたいと思っていたんですけど、サビの「fake! fake!」っていう部分をお客さんと一緒に歌いたいと思って、最終的には“fake!fake!”になったんです。YouTubeに置いておけば、広まりやすいですし。

植草:自分はどの曲にも、印象的なイメージが浮かんでいたんですよね。“サーカスミラー”も候補だったんですけど、この曲ならパパパパパって細切れにカットをつないでいく展開にしたいなとか。“fake!fake!”は曲調的に走っている感じがしっくり来ると思って。自分としては、過去にも走る作品をやっていたので、別の切り口もやってみたい気持ちもあったんですけど、やっぱり音楽に合ったものを作りたいので、違う要素も入れつつ走っている動きを中心とした映像にしたんです。

どの曲がリード曲になっても、孤独に蝕まれていくような話が合うんじゃないかと思っていたんです。(植草)

— シミズさんは作品について、植草さんにどんなことを伝えたんですか?

シミズ:アルバム全体のコンセプトと、リード曲になりそうな3曲のコンセプトをお伝えしました。ビジュアルコンセプトに関しては、いつもジャケットを作ってもらっているデザイナーさんの世界観も大事にしてて、いちばん最初の『すぺくたくるごっこ』が「宇宙」、次の『かいじゅうばくはつごっこ』が「世界」、今回の『おんそくメリーゴーランド』は「遊園地」なんです。宇宙から遊園地へ世界観をどんどん狭めて、小さい世界のなかで大暴れしようよって。ほかにも「少女性と毒」っていうテーマがあったり。

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— 「少女性と毒」っていうのは、どういう意図があるんですか?

シミズ:カラスは真っ白の世界観を作っていて、全部を統べているのがヤギヌマちゃんなんです。そのヤギヌマちゃんの少女性をもっと楽しんでもらえるように、敢えて毒を取り込んでいきたいと思っていて、甘いものに塩をかける的な意味で、毒っていうのは彼女の少女性を助長する要素になると思っていて。

— なるほど! そういうコンセプトメイキングを、かなりしっかりやっていらっしゃるんですね。

シミズ:そうですね。コンセプトは毎回論文みたいな感じで、曲毎に文章にまとめているんですよ。

— それはどこかに発表しているものなんですか?

シミズ:極秘文書ですね。僕がメンバーからヒアリングしたものをまとめて、Wordファイルで5~6ページくらいなんですけど。

— それはすごいですね(笑)。そこまでやってるバンド、他に知りません。じゃあ、そのコンセプトに基いて作品を作りこむわけですね?

シミズ:そうですね。リズム一つひとつ、セクション一つひとつに意味合いを持たせられるか否か。それが後付け、先付け、どっちでもいいと思っているんですけど。だから植草さんにもぜひMVにも反映してもらえたらと思って、コンセプト文をお渡ししたんですけど、想像するという意味では、“fake!fake!”がいちばん難しかったんじゃないですか?

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植草:箱庭感っていうか、どんどん世界観が狭まっているというコンセプトがあったじゃないですか? 僕は昔から、ひとりになると同じことを頭のなかでグルグル考えて、どんどん泥沼にハマって、もしかしたらドア開けたら浦島太郎みたいに自分の知らないうちに世界が変わってしまっているんじゃないかと考えてしまうことがあったんです(笑)。そういうふうにグルグル悩んで、そこから脱出するみたいな感じを、アルバム全体からイメージを膨らませていたんですよね。だから、どの曲がリード曲になっても、孤独に蝕まれていくような話が合うんじゃないかと思っていたんです。

ARTIST INFORMATION

カラスは真っ白

カラスは真っ白

2010年ヤギヌマカナ(Vo.Gt.) シミズコウヘイ(Gt.MC.) ヨシヤマ“グルービー”ジュン(Ba.) タイヘイ(Ds.)により結成。ヤギヌマカナ(Vo.Gt)のウィスパーボイスが奏でる シュールな世界観と、楽器隊のタイトでグルービーなファンキーサウンドの融合によるオリジナリティ溢れる楽曲が詰まった2012年1stミニアルバム『すぺくたくるごっこ』2013年1stアルバム『かいじゅうばくはつごっこ』は、共にロングセラーを続けている。結成以来、徹底的に追及を続けるライブショーは全国各地のオーディエンスを魅了し、様々なバンドとの対バン、イベント出演を重ね、RADIO CRAZY2013などフェ ス出演も果たし、2014年活動の幅が、その音楽性と共にさらに広がりを見せる中、待望の新作となる2ndミニアルバム『おんそくメリーゴーランド』が6/4にリリース。ロックアプローチによるあらたなサウンドアクションや、モンスターリリシストぶりを遺憾なく発揮したヤギヌマカナの歌詞、前作同様エレピやホーン導入によるきらびやかでゴージャスなサウンドなどをスタイリッシュに展開し話題沸騰中。カラスは真っ白にしか出せない、そのポップセンスの加速は止む事を知らない。気鋭の若手アニメーションクリエーター植草航が手掛けたリード曲「fake!fake!」のMVも各動画サイト上で大反響呼んでいる。
植草航(うえくさ わたる)

植草航(うえくさ わたる)

千葉県出身。2011年東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻を修了。デルクール社発行バンドデシネ「シヤージュクロニクル外伝」に短編マンガ掲載、sasakure.UK 3rdアルバム「トンデモ未来空奏図」初回特典漫画制作、第40回「日本賞」ポスターイラスト制作、NHK Eテレ「テクネ 映像の教室」番組内コーナーにて映像作品「愛と死」を制作ほか活動歴多数。 大学院修了制作「やさしいマーチ」が第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞。現在はフリーランスのアニメーション作家、イラストレーターとして活動中。

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