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目を見て話をするように けふなろインタビュー

社会福祉施設で働く職員による異色のバンドが起こした、ある小さな奇跡のお話

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2013/10/11)

社会福祉施設の職員によって2003年に結成された異色のバンド・けふなろ。自立支援のための音楽療法の一環としてスタートしたこのバンドは、この10年間、あくまでマイペースを保ちながら、施設の利用者に音楽による安らぎを届け続けてきた。そんな彼らが、昨年ひょんなことからCDデビュー。すると、そのデビューシングル『チョコレート色の街』は、なんと4,000枚以上の売り上げを記録したのだ。このCDが売れないと叫ばれるご時世、大きなプロモーションもなく、全国をツアーで回ったわけでもないバンドが、この数字を叩き出すというのは、ちょっとした奇跡だと言っていいだろう。もちろん、彼らは普通のバンドとは立ち位置が異なるし、CDが売れたのもレコードショップ中心ではないだろう。しかし、あくまで一対一での対話を基本姿勢とするバンドが生み出したこの結果は、音楽の本質がコミュニケーションであることを改めて思い出させてくれる。セカンドシングル『明日に着がえたら』を発表したけふなろの三人に、これまでの歩みを訊いた。

みんなで集まるのは好きだけど、コミュニケーションが苦手っていう人もいて、そういう人にとっては、聴いてるだけでみんなと同じ空間にいられるっていうのが安心するみたいですね。(MAYU)

— みなさん普段は社会福祉施設で働いていらっしゃるとのことですが、どんなお仕事をされているのですか?

MAYU(Key):私たちの仕事の内容は、心の病気を抱えた方の就労支援です。20代から60代ぐらいまでの、お仕事をしたい方たちが訓練のために通ってきていて、清掃やパソコン入力、カフェの接客などを、それぞれが分担して指導しています。

MAYU(Key)
MAYU(Key)

— では、そんな中でどのようにしてバンド結成に至ったのでしょうか?

MAYU:通ってきている方たちの中には生活のリズムがかなり崩れてしまっている人が多かったり、無趣味な方も多いので、おすすめの本や映画、音楽を教えたりするんですね。そういう話をする中で、「実は学生のときにバンドをやってたんです」っていう話をしたら、「聴いてみたい」って言われて、CDを貸したんです。そうしたら、そのCDが通ってきてる方たちの中で流行って、親御さんや他の施設の方にも話が広がり、「ライブを見てみたい」っていう話も出るようになって。それで、音楽治療の一環というか、こういう時代なので、悩みを忘れられる時間を作れたらということで、活動を始めました。

— みなさん学生時代に音楽をやっていらしたんですよね?

KINYA(Vo):遊びみたいなものですけど、普通にみんなが好きなロックをかじってて、BOOWYとかをやってましたね。

KINYA(Vo)
KINYA(Vo)

SUMI(Vo):私も学生時代に学園祭で歌ったりとかした程度で、楽器もほとんどできないんですけど、歌はもともと大好きでした。

— でも、まさか社会人になってバンドを組むことになるとは思ってなかった?

SUMI:自分たちでもそんな「じゃあ、やろう!」っていう感じでもなくて、「やってみる?」みたいな感じだったんですよね。

SUMI(Vo)
SUMI(Vo)

— ライブはどういう場所でやられてるんですか?

MAYU:ライブハウスに行ったことがない方も結構多いので、貸切みたいにして、座って見てもらったり。

KINYA:あとは同じ企業の関連施設でイベント的にやらせてもらったり、クリスマス会とか、そういう内々のところからだんだん広がっていったような感じですね。

MAYU:大きい音が苦手な方も多いんですけど、「SUMIちゃんの声を聴くと、眠れる気がする」とか「安らげる」って、ちょっとずつ集まってくれるようになりました。

— 「安らげる」っていうのがひとつのポイントなんですね。

MAYU:電車に乗れなかったり、外に出るのもやっとっていう方も多いので、そういう人たちがちょっとでも嫌なことを忘れられるようにっていうのは思っています。あとは、みんなで集まるのは好きだけど、コミュニケーションが苦手っていう人もいて、そういう人にとっては、聴いてるだけでみんなと同じ空間にいられるっていうのが安心するみたいですね。

SUMI:すごくノリノリの人がいるわけではないし、手拍子とかもそんなにあるわけじゃないんですけど、その場の雰囲気はすごくあったかくて、「聴いてくれてるな」っていう感じがするんですよね。

ARTIST INFORMATION

けふなろ

けふなろ

2003年、社会福祉施設で働く職員達の中から仕事の一環として 音楽療法を取り入れる話があがりました。 バンド経験のあるメンバーがその声に賛同して集まり『けふなろ』 の誕生となりました。

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