DJまほうつかいインタビュー 漫画家・西島大介のもうひとつの顔

DJまほうつかいとは、『世界の終わりの魔法使い』『ディエンビエンフー』などで知られる漫画家の西島大介が、音楽活動で使用する変名だ。個性的でかわいい絵柄とシャープな批評性で唯一無比の漫画家となっている西島だが、音楽においても8年近く、マイペースに創作を続けている。その楽曲も、やはり独特のものだ。エレクトロニカを軸足に、メタルやクラシカルピアノ、DJプレイなど奔放にジャンルを横断するスタイルは、聴く者に新鮮な驚きを与えずにいない。また提供されるCDやグッズ、フライヤーなども独特に彩られており、その活動全体がパフォーマンスとして完結していると言っていい。今回、新譜の発売とCINRA.STOREでのオリジナルiPhoneケースの制作に際しても、そのセンスは遺憾なく発揮されている。DJまほうつかいとは何か? 西島大介は何を考えているクリエイターなのか? その全貌を自らの言葉で明かしてもらった。

取材・テキスト=さやわか 撮影:小島直子(2013/8/9)

DJまほうつかいのルーツ

— 今日は漫画家の西島大介が「DJまほうつかい」という別名義で音楽活動を始めた経緯から話していただきたいんですが、まずこの名前で活動を始めたのはいつですか?

西島:2005年に『世界の終わりmix』っていうミックスCDを出した時が最初です。

— そのミックスCDとはどういう内容のものですか?

西島:磯部涼さんが2004年に『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版)っていう音楽評論集を出して、僕はこの本の表紙を描いたんだけど、発売時に磯部さんが下北のヴィレッジヴァンガードとかでDJやけのはらとSHIRO THE GOODMANのミックスCDを本に付けて売ってたのね。それを見て「あ、本にCD付けられるんだ」と思って、同じ年に出た自分の単行本『世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社)が発売されるタイミングで、ミックスCDを付けて売ろうと思ったんだよね。磯部さんの真似して。

— だから「DJまほうつかい」なわけですね。

西島:そうそう。要するに『世界の終わりの魔法使い』のサントラを作るためのDJだったから「DJまほうつかい」という名前がいいだろうと。逆に言うと、その後の活動は実はそんなに想定してなかった。

— 「今後、自分は音楽活動をやる時にこの名前を使おう」と思ったわけではない?

西島:そう。そのミックスCDをCD-Rで100枚焼いて、下北ヴィレヴァンで本と一緒に配った。でもそのミックスCDの内容がいいなと思っていたので、経堂アペルっていうギャラリーで『世界の終わりの魔法使い展』っていう展覧会をやったときにも同じ音源を使ったんですよ。で、そこにお客さんとしてCommune DiscのレーベルオーナーのAENさんが来ていて「さっきの音源よかったんで、うちから出しませんか」って言われて、一応プレスされることになった。

— 西島君は当時、音声編集は全部Mac OS9のSoundEdit16だけでやってましたよね。

西島:うん。全部SoundEdit16だからピッチが合わせられなくて、DJミックスも何となくフェードインフェードアウトしていくっていう感じだった。

— それを使って深田恭子の“最後の果実”のリミックスとかもやってたし。

西島:そうそう! あれは超秘蔵音源だわ。そういう意味ではミックスCDを出す前から一応、音楽活動はしてるんだね。深田恭子のリミックスを勝手に作って自分で楽しんだり、『網状言論F』っていう東浩紀さん主催のイベント用に、出演者の鈴木謙介、斎藤環、佐藤心なんかの声をカットアップエディットして映像を付けたり。まあずっとそういう、サンプリングコラージュばかりで音楽を作ってたんだよね。いきなり「DJまほうつかい」としてCDをリリースしたわけではなかった。

— 音楽に限らず、もともと西島君にはそういうオマケ的なものを自分で楽しんで作っちゃうところがありますよね。マリオペイントで映像や音楽作品を作ったり、キョンシーのアイコンを作ってウェブで配布したり。

西島:うん、勝手に何か作るってやつですよね。東さんのやつも勝手に作ったからね(笑)。深田恭子のやつも「いいなあ、これリミックスしなきゃ」って思って作った。別に注文されたわけじゃないですから。

— まあ東さんはともかく、深田恭子に注文されることは絶対ないと思いますけど(笑)。

西島:なんか細々したものを作るのが、たぶん好きなんだよね。まあ最近のネットレーベルの人たちがやってるようなことをやってたんだよ。いいものができたとは思っているんだけど、それを広く伝える手段がなかっただけで。

音楽への姿勢は漫画とは対極

— そういう姿勢で活動しているということは、DJまほうつかいを「ミュージシャン」だと自認しているわけではないということでしょうか? あるいは、たとえばCommune DiscからプレスされたCDが出たりして、自分をミュージシャンだと感じた?

西島:あ、ない。全くない。それこそノイズしか入ってないものでも出せるのがCommune Discであり、音響派のシーンだったと思うのね。だから音楽家の自覚はなかったですね。

— じゃあ今こうやって新譜のCDをリリースしていても、そういう意識ですか?

西島:そうですね。「売ったりもできるんだ」っていう感覚(笑)。網状言論Fとか深田恭子リミックスを作ってたころと、やってる事としてはそんなに変わらないというか。他人の音楽とか表現を見て刺激を受けて、「ああ、そんなものを作ってみたいな」「作れそうだな」って思って作っているだけですよね。

— しかし一方で、漫画家やイラストレーターとしての西島大介は、商業出版とか出版流通という形式にすごく関心が深いように思うんですよね。「商品」はいかにして作られるかというテーマを重視しているというか。

西島大介
西島大介

西島:そうだね。不思議なことに、漫画では同人活動もしてないですし。だけど音楽だと明らかに同人活動みたいなことをやっている。ただね、デビュー作の『凹村戦争』(早川書房)を描いて、初めて「漫画が描けた」って思ったとき、既にそれは商業出版されたものだったんだよね。もうその時点で、自分にとって「漫画」っていうのは、編集者に原稿を渡して印刷されて全国の人に配られるものだっていう感覚だった。ずっと同人で漫画を描いていて「これ出版した方がいいよ」って言われた人とは違うんだよね。

— なるほど。『凹村戦争』は描き下ろしの単行本として出版された処女作ですから、言ってみれば「漫画」の描き方を、最初から商業出版される形でしか知らないというわけですね。

西島:そうそう。だけど音楽のほうは逆だよね。『世界の終わりmix』のCD-Rは100枚しか作ってないし、特定の書店に置いてもらっただけだし。漫画の単行本を1万部とか全国流通させるのとは全然規模も違うんだよ。言ってみれば漫画家としての活動の100分の1ぐらいの規模で音楽活動を始めてしまったというか。今もやっぱり、その延長線上にあると思ってますね。

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DJまほうつかい

DJまほうつかい

DJまほうつかいはターンテーブルを持っていないDJです。まほうのちからで音楽を作ります。MIX CD『世界の終わりmix』(2005)や自作のサントラ盤『ディエンビエンフー サウンドトラック』(2007)、さらにX JAPANのコピーバンドを経てメタルをエレクトロニカで再構築した『Metaltronica』(2011)など、その音楽性は常に変化。相対性理論presents「実践III」や、フリー・ジャズの聖地新宿PITINNなどで演奏を行う異端の音楽家。ピアノ曲をまとめた『All those moments will be lost in time EP』を2013年8月7日HEADZよりリリース。本業はマンガ家の西島大介です。

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