『フラッシュバックメモリーズ3D』対談 松江哲明(監督)×高根順次(プロデューサー)

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:田中慎一郎(2013/1/18)

音楽家GOMAの半生を題材としたドキュメンタリー映画『フラッシュバックメモリーズ3D』は、あらゆる意味で画期的な映画である。元々はスペースシャワーTVの番組用に発案されたインディペンデント映画でありながら、3Dと5.1chの手法を用い、記憶の神秘性やGOMAの人間性を見事に描き出すと同時に、音楽作品としても抜群の臨場感を持ち合わせるという、これまでに味わったことのない体験をさせてくれる作品なのだ。
この作品が生まれるにあたって、もちろん監督である松江哲明の存在が大きかったことは言うまでもないが、しかし、『ライブテープ』や『トーキョードリフター』といった、これまでの松江作品と大きく違うのは、プロデューサーである高根順次の存在であった。「インディペンデントの3D映画」という難題をクリアすることができたのは、高根の尽力があってこそであり、松江自身「監督が特別視され過ぎている」と言うように、映画は多くのスタッフがいてこそ成り立つもの。そこで、今回はこの二人の対談を実施し、この画期的な作品がいかにして生まれたのかを語ってもらった。困難の中でも希望を見出す映画の内容と同様に、二人の対話からはもの作りに対する希望がはっきりとうかがえるはずだ。

今回は3Dでしたけど、無理そうに思えても、やればできちゃうことってわりと多いのかなって、やってみて感じましたね。(高根)

— まずは高根さんがGOMAさんのドキュメンタリーの制作を、松江監督にお願いした経緯から教えてください。

高根:松江さんと初めてご一緒した神聖かまってちゃんのドキュメンタリー(『極私的神聖かまってちゃん』)を作り終えた直後に、WONDERGROUND MUSIC(GOMA & The Jungle Rhythm Sectionの所属事務所)の小川(雅比古)さんから、「GOMAさんが復活しようとしていて、関係者用のお披露目ライブを予定しているから、スペースシャワーでドキュメンタリーができないか」っていうお話をもらったんです。それで、最初はあまり何も考えず、「松江さん、こういう人がいるんですけど、ライブ見に行きませんか?」って誘って、一緒に見に行ったっていうのが最初です。

— そのライブを見て、松江監督はすぐに3Dで撮りたいと思ったそうですね。

松江哲明
松江哲明

松江:そうです。ただ、実際に3Dで撮れるかどうかっていうのは二の次でした。3Dがどれだけお金かかるのかはもちろん知ってましたし、そもそもスペースシャワーでは3Dで放送できないですから。ただ、まず手法として、病気の人が頑張ってリハビリして復活しましたっていうような、『情熱大陸』的なドキュメンタリーを撮るんじゃなくて、音楽をメインにした、ミュージシャンとしてのGOMAさんを映像として最大限に表現するためには、3Dだって思ったんです。

— 松江監督にとっては、その「手法」が重要なわけですね。

松江:『ライブテープ』にしても、1カットで正月に撮る、しかもミニDVでっていうのがテーマだったし、何で撮るのかっていうことによって、映画も変わるべきだと思うんですよね。僕の映画はそこがすごく大事で、手法が上手く作品とリンクすると、映画自体新鮮な感じになるんです。

高根:松江さんは「どういう風に撮るか」っていうところのアイデアが飛び抜けて面白い人なので、予想外のことを言ってくるだろうとは思ってたんですけど、「まさか、3Dか……」って思いました(笑)。



— 高根さんも3Dはやったことがなかったわけですよね?

高根:ないですね。ちょうどスカパーで3Dチャンネルをやり出した時期だったんですけど、そこで作った人の話を聞くと、「編集費だけで4ケタ必要」とかだったんで、普通に考えて難しいなって最初は思いました。

— では、それをいかにして実現させることができたのでしょう?

高根:松江さんと二人で3Dの編集をやってる人の話を聞きに行ったり、何か方法がないかってリサーチして回ったんですけど、やっぱり既存の方法でやってる人に聞いても、それは結局できないと。それで、普通にGoogleで「3D 格安」みたいに検索したら、今回作ってくれた渡辺(知憲)さんの「個人で3Dを作ってます」っていうホームページに行きあたったんです。

— ホントに独力で探し出したんですね。

高根:そう、それで実際に渡辺さんが作ってるミュージックビデオの3D演出の部分を見せてもらったら、クオリティーが素晴らしくて。それで、企画を話して、「予算もこれぐらいしかないですけど、できますか?」って聞いたら、「ビジネスとしては成り立ってないけど、個人的にやりたいのでやりましょう」と言っていただいて。

— 実現のためには、個人の想いも重要だったわけですね。

高根:僕は技術の人ではないですけど、そんなにお金がかからずに使えるすごい技術って結構あると思うんです。それが一般化、商品化されてないっていうだけで。ただ、今は個人がそういうテクノロジーを使って、ある程度具現化できてる時代だと思うので、今回はたまたま3Dでしたけど、無理そうに思えても、やればできちゃうことってわりと多いのかなって、今回やってみて感じましたね。

BRAND INFORMATION

松江哲明

松江哲明

1977年、東京都生まれ。99年、日本映画学校(現・日本映画大学)卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、99年山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波特別賞」、「NETPAC特別賞」、平成12年度「文化庁優秀映画賞」などを受賞。その後、『カレーライスの女たち』『童貞。をプロデュース』など刺激的な作品をコンスタントに発表。2009年、女優・林由美香を追った『あんにょん由美香』で第64回毎日映画コンクール「ドキュメンタリー賞」、前野健太が吉祥寺を歌い歩く74分ワンシーンワンカットの『ライブテープ』で第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞、第10回ニッポン・コネクション「ニッポンデジタルアワード」を受賞。著書に『童貞。をプロファイル』『セルフ・ドキュメンタリー?映画監督・松江哲明ができるまで』など。
高根順次

高根順次

1973年、秋田生まれ。現在スペースシャワーTVにてプロデューサーとして様々な企画を手掛ける。最近の仕事はライブアーカイブサイト「DAX」や最低で最高なアイドルアニメ「バックステージアイドルストーリー」等。

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