運営ディレクター募集のお知らせ

マンガ家・大橋裕之の半生を振り返る

インタビュー・テキスト:ばるぼら 撮影:柏井万作(2013/7/2)

大橋裕之の高校卒業後のある時期を描いた自伝的作品『遠浅の部屋』が6月6日に発売された。オビに「オレはいったい何になりたいんだろう」とあるように、将来に悩みながらもがく10代最後のタイミングの物語である。悶々とした迷いや焦り、不安に襲われながら、自分のやりたい道と現実をどのようなバランスで生きればいいのか。誰もが一度は抱いたであろう想いを自らの体験を通じて率直に描いた作品だ。

作品に登場するエピソードや、プロボクサーを目指すといいながらマンガ家を志す話などは、ほとんど作者の実体験をふまえて描かれている。『遠浅の部屋』に描かれている時期は限定的だが、本書を読んだ読者の多くはこれ以前・以後の話にも興味を持ってしまうのではないだろうか。ここでは大橋裕之という個人をフィーチャーし、これまでの道程を時系列に振り返りながら、今の気持ちを語ってもらった。

楳図かずお先生のマンガはもちろんストーリーもすごいですけど、怖すぎて笑っちゃう感じとかも含めて、全部が衝撃でした。

— 今回は『遠浅の部屋』と絡めつつ、大橋さん個人の来歴に焦点を当てたお話を聞ければと思います。愛知県の蒲郡市出身で、誕生日は1980年1月28日ですよね。血液型は?

大橋:A型です。え、なんでですか?(笑)

— いや、こういう基本情報を聞いておくと誰かがWikipediaを更新するんじゃないかと思いまして(笑)。大橋さんは小学校に入る前からすでにマンガを描いていたそうですね。

大橋:保育園のときから、少し仲の良い子には自分で描いたマンガを見せたりとかしてましたね。でも、細かい描き方が分からなかったので、ほかのマンガを真似て描いてた感じです。最後まで完結したマンガもあんまりなくて。

— 最初のオリジナル作品は『忍者の拳』というそうですが、どんな作品だったんでしょう。

大橋:小学1年生のときに描いたマンガで、忍者が道場を経営していて、弟子たちに手裏剣の投げ方を教えたりする話なんですけど、結局その作品も完結はしてないですね。主人公は僕自身ともう一人、白井君っていうマンガを見せてた友達です。文房具屋で買った分厚いノートの表紙を破って、自分で描いた別の表紙をつけて本にしたんですけど、20ページくらいで終わってました。

— タイトルは『北斗の拳』っぽいですけど、内容は関係ないんですね。

大橋:『北斗の拳」的な絵は、ケンシロウ的なキャラがラオウ的なキャラをずっと殴り続けてたりとか(笑)、そういう場面場面だけを描いてました。『キン肉マン」でも、手足がちぎれたり血だらけになったりするのをずっと描いてたりとか(笑)。その頃の絵は今も残ってます。

— その当時は、どんなマンガに影響を受けたんですか?

大橋:小学校4年か5年のときに楳図かずお先生の『漂流教室』の1巻をよくわからずに買って、それがすごく大きかったと思います。それまでは『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』『コロコロコミック』とか、そういう少年誌を読んでいたんですけど、なぜ買ったのかいまだに覚えてなくて。

— 本当に偶然出会ったんですか?

大橋:もしかしたらどこかで先に『まことちゃん』を立ち読みしてたのかな……。あの頃はジャケ買いじゃないですけど、気になったタイトルとかでふいに買うということはよくあったんです。楳図先生のマンガはもちろんストーリーもすごいですけど、怖すぎて笑っちゃう感じとかも含めて、全部が衝撃でした。『14歳』とか『わたしは真悟』とか、ほかの作品は高校に入ってから集めましたね。

— 『遠浅の部屋』では、はた万次郎先生の名前も出てきますよね。はた先生は80年代は『ビジネスジャンプ』や『ヤングジャンプ』に連載していて、小学生からは少し遠いマンガ家だと思うんですが、どうやってたどり着いたんでしょうか?

大橋裕之
大橋裕之

大橋:あれも小学5、6年だと思うんですが、当時まだ本屋ってマンガの単行本が立ち読みできたんです。住んでたところは田舎なんですけど、本屋はちょこちょこあったので、本屋を巡ってはいろいろと立ち読みをしてました。その中で、『はた万次郎のおもしろ図鑑』ってマンガが面白いなと思って買ってましたね。エッセイ的な感じで、絵もふにゃふにゃしてて。

— 楳図かずおからはた万次郎まで、不思議なふり幅だと思っていたんですが、書店で脈絡なく突然出会っていたんですね。

ARTIST INFORMATION

大橋裕之(おおはし ひろゆき)

大橋裕之(おおはし ひろゆき)

1980年生まれ。愛知県蒲郡市出身。単行本「シティライツ」全3巻(講談社)、「音楽と漫画」(太田出版)、「夏の手」(幻冬舎)、「遠浅の部屋」(カンゼン)発売中。

OTHER FEATURES