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正直な歌うたい原田茶飯事インタビュー 「ちょっと変わった人間だなと自分でも思います」

前回の取材では「僕は幸せを振りまくタイプの人間なのかもしれない」と言っていたのが印象的だった原田茶飯事、1年8ヶ月ぶりとなるアルバム『いななき』を聴いて、それはウソではないかもしれないと思った。理不尽なことだらけの世の中だけど、決して悪いことばかりでもないし、恋をすればウキウキする。毎年100〜200本ものライブで全国各地を旅してまわり、さまざまな出会いから生まれる原田茶飯事の歌は、ときに人間の弱さや不純さを見せながらも、いつでも素直で前向きだ。

1990年代渋谷系の作品も数多く手掛けた森達彦(hammerlabal)をエンジニアに迎え、ソフトロックやブラジル音楽をベースとしたサウンドは、より人間味あふれる仕上がりとなり、「ずっと一緒にいこう」ではなく、「途中まで一緒にいこう」と歌う彼の言葉は、重たくなった心をスッと軽くしてくれる。きれいごとだけじゃない正直な気持ちが綴られた今作について、数々のエピソードとともに語ってもらった。

インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作(2015/03/27)

自分が不安症じゃなかったら、こんなに続けてなかったかもとは思います。

— 前作から2年弱くらい、相変わらずものすごい数のライブをされていますけど、アルバムはいつ作っていたんですか?

原田:実は去年の5月にはレコーディングは終わってたんです。僕は旅に行くと曲もできやすくなるんですよね。歩いたり、人と出会ったり、そういうのが刺激になっているんだと思います。逆にライブせずに引きこもったら曲ができないんじゃないかっていうくらいで。

原田茶飯事
原田茶飯事

— 曲は家に帰ってきてから作るんですか?

原田:断片は旅先で作って、それを家でまとめる感じですね。1〜2行の歌詞を書きためておくことが多いんですけど、まずアカペラで歌ってみて、自分が泣きそうになる瞬間が一カ所でもある歌は合格みたいな感じです。

— じゃあ、アルバムを作るぞっていう感じで作るんじゃなくて、ぐるぐる旅している間に浮かんでくるんですか?

原田:そうですね。最近よく思うのが、曲の在庫がなくなって出し切ったらもう生に未練はない感じなんですけど、幸いなことにまだアルバム2枚分くらいの新曲があるので、常にこれを繰り返せばなんだかんだで90歳くらいまでは続くんじゃないかなとは思っています。

— 90歳! ある意味ワーカホリックですね(笑)。

原田:お客さんに忘れられることが一番怖いんですよね。前に大阪でやっていたクリームチーズオブサンを解散してからは、「あの人、まだやってるんだ」みたいな過去の人になるのが怖くて。自分が不安症じゃなかったら、こんなに続けてなかったかもとは思います。

— とにかく動き続けてないと不安になる?

原田:そうですね。でも、基本的には作曲も録音も大好きだし、ライブも無理してやってないから、そんな努力しているような感覚はなくて。あと最近は、暇があったら矢沢永吉さんのドキュメントを見てしまうんですよ。ものすごい共感できて。

— どんなところに共感を?

原田:僕とは規模が全然違いますけど、矢沢さんもキャロルを解散してから、直接各地の関係者と繋がったり、自分のチームを作って制作したり。いまはそういうミュージシャンも増えたと思うんですけど、それを日本で何十年も前からやっていたっていうのは、尊敬以外のなにものでもないです。

すごく薄情な言い方ですけど、作品を作るという意味では、平穏な時代よりも、何かしら問題のある時代の方がいい。

— 今作は、世の中に対して不満はあるんだけど、最終的には「でも、楽しいよね」という表現になっていますね。そうなったのは、何故でしょうか?

原田:メッセージっていうとちょっと大げさですけど、「どうしようもない世の中だけど、楽しく夢中になれることを探してがんばっていこう」みたいな想いがあるんです。社会について歌うにはあまりにも不勉強だけど、ちょっとずつ歪みが大きくなっているのは実感していて、どうすればいいっていうことよりも、もう少しカジュアルな気持ちとして、純粋にそこを共感してもらえたらいいなと思ってますね。

— 社会に問いかけたいというよりは、個人的な気持ちを吐き出したかった?

原田:どう受け取ってもらうかは聴く人それぞれですけど、言わずにはいられなかったというか。でも、この作品を作るという意味では、いい時代に生まれたなと思うんです。僕はブラジル音楽が好きなんですけど、1960年代のブラジルはクーデターが起きて軍事政権になったりっていう時代背景があったからこそ生まれた素晴らしい曲もあって。すごく薄情な言い方ですけど、作品を作るという意味では、平穏な時代よりも、何かしら問題のある時代の方がいい。そのせいで自分に不幸が降りかかったとしても、それが歌になるので。これ、前のインタビューでも同じようなこと言いましたよね。全然進歩がない。

原田茶飯事

— いやいや。でも、前よりもスケールが大きくなりましたよね。前はカツアゲされたとか、ヤクザに殴られたとか、そういう不幸だったので。

原田:そうかもしれないですね(笑)。もういい歳なので、こういう歌も歌いたくなってきているのが、うれしくもあり、悲しくもありなんですけど。

原田茶飯事『いななき』

原田茶飯事『いななき』

発売日:2015年4月3日
価格:2,500円(税抜)
ダバダレコード / DABAD-5207
1. どうかしてるぜ
2. 終末のドライブ
3. はみだしそう
4. エーデルワイスのように
5. きみが夢にでてきたら
6. ヴァンサンカン
7. おもいやりの茶飯事
8. モンスーン
9. 大通りは愛でいっぱい
10. ヒッチハイク

ARTIST INFORMATION

原田茶飯事(はらださはんじ)

原田茶飯事(はらださはんじ)

5月2日大阪うまれのA型。あっちにも行けるしこっちにも行ける、全方位型シンガーソングライター。2009年から東京に拠点を移しガットギターを手に年間150本ほどの公演を続け全国を渡り歩く。ソフトロックやMPBの洒落っ気、茶目っ気を感じさせながらも口から半分魂の出たようなステージングは必見。

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