Sugiurumnインタビュー バンドマンから転身し、世界で活躍するDJへ

インタビュー・テキスト:渡辺裕也 撮影:柏井万作(2013/7/24)

これぞSugiurumnによる、Sugiurumnにしか作れない音楽。前作『What Time Is Summer of Love?』以来、実に6年ぶりとなるスタジオアルバム『May The House Be With You』は、このSugiurumnこと杉浦英治というミュージシャンのキャリアをひとつにぎゅっと凝縮させたような、まさにここまでの集大成と呼ぶにふさわしい作品だ。全編がゲストボーカルを招いての歌モノで構成された本作は、かつてElectric Glass Balloonというロックバンドでデビューしながら、いまや国内外で活躍するトップDJとなったという、この異色の経歴をもつ男にしか生み出しえない深みのあるサウンドに仕上がっている。最近では主宰レーベル「Bass Works Recordings」を始動させるなど、ここにきてまた大きなアクションをいくつも起こし始めているSugiurumn。そんな彼に、最新作の内容に迫る話題はもちろん、クラブシーンの中心地・イビザで起きている新しい動きから、彼の視点から見た国内シーンの動向に至るまで、たっぷりと語ってもらった。

みんな最初は自分だけでやってみようとしてるんだけど、結局はそれじゃ広がりがないなって、どこかで気づいてるんだよね。

— ニューアルバムの話に入る前に、まず「Bass Works Recordings」について訊かせてください。このタイミングでレーベルを始めたのは、どんなきっかけがあったんでしょうか。

Sugiurumn:やっぱりCDを出すにしても、前作を出した6年前と今では、音楽の買い方も楽しみ方もかなり大きく変化したでしょ? それこそ今回みたいにミュージシャンを集めてアルバムを作ったりするのも、昔に比べてすごく難しい時代になってる。その一方で、コンピューターを使って家でクラブトラックを作る環境は、昔では考えられないくらいに進化したよね。そこでもっと風通しよく自分の音楽を出せたらいいなと思ったのが、レーベルを始めるきっかけだった。

Sugiurumn
Sugiurumn

— 元々はSugiurumnさんの曲をリリースするために設立されたんですね。

Sugiurumn:うん。でも、いざ始めるとなったら、やっぱり自分の作ったものだけを出してもつまらないなと思って。それでいろんな人に声をかけてみたら、みんなも俺みたいな感じだったんだよね。

— その「俺みたいな感じ」というのは?

Sugiurumn:要するに、みんなレーベルとかはそれぞれ始めているし、最初は自分だけでやってみようとしてるんだけど、結局はそれじゃ広がりがないなって、どこかで気づいてるんだよね。たとえばヨーロッパだと、小さいレーベル同士でお互いにリミックスし合ったり、いろんなことをシェアしていく中で、地域に根差したカルチャーが作られていくんだけど、日本って意外とそういうのがない。でも日本だって、もちろんミュージシャン同士のつながりはあるんだから、もっと音楽でコミュニケーションがとれたらいいなと思って。DJ同士でも「あいつはあのリミックスをやってくれた」みたいな関わりがあると、ぜんぜん違うんだよね。

— なるほど。もっと体系的にミュージシャン同士の繋がりを見せていこう、と。

Sugiurumn:たとえばスペインやイギリスのダンスカルチャーといえば、何かしらのイメージが浮かぶでしょ? でも、海外から日本を見ると、意外とそれがイメージできないみたいで。だから、外から見てぱっとわかるようなものがひとつあったらいいなと思って。個人でやっているからそんなに大がかりなことはできないけど、ここを入り口としてもっと突っ込んだことをやる人がでてきてもいいしね。

— 「Bass Works Recordings」はリリースのペースもすごく速くて。

Sugiurumn:うん、毎週水曜日に出してるんだ。

SOUNDCLOUDでは期間限定でフリーダウンロードも実施されている

— そのスピード感も、今の時代を意識してのことですか?

Sugiurumn:それもあるよ。でも、そもそも自分は曲作りもリミックスも、作業は速い方なんだ。それに、たとえば『週刊ジャンプ』で連載されている漫画なんか、あれだけのクオリティーのものを毎週出しているわけでしょ。

— たしかに(笑)。

Sugiurumn:しかもそれを何十年間も続けている人がいるんだからさ。それと比べたら俺のレーベルなんて、自分の曲だけを出しているわけじゃないからね。

リッチーたちは、何万人も入る環境をたった二人だけで毎週回しているんだ。それもEDMじゃなく、シリアスなダンスミュージックでね。

— そうして活発な創作活動をされている一方で、フルアルバムのリリースは前作から6年ぶりとなりました。

Sugiurumn:仕事してないやつだと思われてたかもね(笑)。自分にとってはイビザで受けた刺激もけっこう大きくて。イビザは定期的に行ってるんだけど、去年からマルコ・カローラの『Music On』と、リッチー・ホウティンの『Enter』っていうふたつのパーティーが始まって、それで久々にテックハウスの楽しみ方を新しい形で見せられたというか。この数年、クラブではいわゆるEDMが流行ったわけだけど、自分はまったく好きになれなかった。多分リッチーにもそういう思いはあって、だからこそ、今まで自分でパーティーをやらなかった彼が、『Enter』を立ち上げたんじゃないかなって。しかもそこで始めたものが、実際にすごく新しかった。

— 現在のムーブメントに向けた、リッチーからのカウンターアクションということですか。

Sugiurumn:アプローチの仕方にリッチーのパンクな面が表れていて、他のクラブのメインアクトを自分のパーティーに出しちゃう代わりに、自分も彼らのパーティーにゲスト出演するっていう、これまでイビザではタブーだったことをやったんだよね。たとえば、Sven VathがAmnesiaでやってる『Cocoon』にリッチーがゲストで出て、翌日Spaceでやってる『Enter』にSven Vathがゲストで出てたり。

— ふたつのパーティーを、二人で回してるんだ。

Sugiurumn:そう。で、その翌週の『Enter』はLucianoがゲストだったんだけど、Lucianoはその道路を挟んだ向かい側のUshuaiaで毎週1時までのパーティーをやってて、その時のゲストがリッチーでさ。1時まで二人でBACK TO BACKでやって、1時からは向かいのSpaceの『Enter』で二人でやるっていう。だからリッチーたちは、何万人も入るメインフロアをたった二人だけで回していた。それもEDMじゃなく、シリアスなダンスミュージックでね。

— それはかっこいい!

Sugiurumn:『Enter』はトイレまでデコレーションしてるし、日本のビールも小瓶で飲めるんだよ(笑)。そういう細部にいたるこだわりもすごくて(リッチーは日本好きで知られていて、『Enter』のサブスローガンはMUSIC / SAKE / TECHNOLOGY / EXPERIENCEだった)。そういう中で見せられると、やっぱり同じDJでもぜんぜん違うんだよね。あと、『Enter』の看板は、真っ黒いマルだけで、場所とか何にも書いてない。ただのマルだけに1週間で何百万もかかる看板を使ってる。でも、いまやそのマルを見ただけで、『Enter』のことを考えちゃうんだよね(笑)。そういうのが久々にワクワクしたんだ。

BRAND INFORMATION

Sugiurumn(すぎうらむ)

Sugiurumn(すぎうらむ)

世界最先端のハウスシーンと常にリンクする唯一無二の日本人DJ/プロデューサー。 2004年にリリースしたアルバム『Our History is made in the night』が日本のダンスシーンで大きく注目され、アルバムからシングルカットされた「Star Baby』が大ヒット。2006年に世界最高峰のクラブ、Pacha IbizaのミックスCDのDJに選ばれPachaのメインフロアで4,000人のクラウドをロック。Pachaから絶大な信頼を受け、それから3年連続で毎年Pacha IbizaのMix CDを手掛けている。 2007年、AVEXに移籍し『What time is summer of love?』をリリース。アルバムからのシングル「Travelling」は世界中のレーベルからライセンスのオファーが殺到。2013年4月シリアスなダンスミュージックを世界に発信するBASS WORKS RECORDINGSをスタートさせた。そして7月24日、ワーナーミュージックより、6年振りとなるオリジナルアルバムを『May The House Be With You』発売する。クラブミュージック、その先のビートはきっと彼が教えてくれるだろう。

OTHER FEATURES