落語とロックの融合 How to count one to tenインタビュー

落語+興幻◎しポストロック=日本独自の複合アート作品。
その狙いとは?

インタビュー・テキスト:渡辺裕也 撮影:矢島由佳子(2014/10/8)

さあ、お立ち会い。奥原祐太率いる5人組のポストロックバンドHow to count one to ten(以下HTCOTT)が、トンデモない試みに打って出た。彼らにとっては3作目となるEP『Method of slow motion』のクライマックスとして収録されている楽曲“mathematics;re”が、とにかくぶっ飛んでいるのだ。視覚を遮った状態で物語を展開させる興幻(きょうげん)を繰り広げる本名竜也、そして独自性に富んだスタイルで知られる立川流の落語家・立川吉笑。この二人を招聘したHTCOTTは、彼らの定型とも言えるマスロック的なアンサンブルにドラマ仕立てのストーリーと落語を組み込むことで、世にも不思議な複合アート作品をここに具現化させてしまったのだ。本名による一人語りから始まり、立川による演目『鮫講釈』が一気にバンドサウンドと絡まってグルーヴしていく様は、とにかくスリリングの一言。落語とポストロック、興幻◎し(きょうげんまわし。これについては以下のインタビューを参照してほしい)のどれか1つにでも関心があれば、まずはぜひ一聴をおすすめしたい。 では、ここからは早速バンドの首謀者であり、このあまりに突飛なアイデアを思いついた張本人である奥原に話を訊いてみよう。“mathematics;re”のことはもちろん、奥原が標榜とするアートの理想形についても深く踏み込んだ内容になっているので、そのあたりもぜひ楽しんでいただけたら幸いだ。

5年前から「落語と興幻◎しと音楽を組み合わせた何かがやれたら、きっとものすごいことになる!」と、ずっと思ってたんです。

— 今回の新作『Method of slow motion』の目玉は、なんといっても“mathematics;re”ですよね。この曲のアイデアはどのようにして生まれたんですか。

奥原:実際にこのアイデアを具現化しようと動き出したのは、昨年末のことなんですけど、曲の構想そのものはけっこう前からあったんです。僕と落語家の立川吉笑くん、興幻◎しの本名竜也くんの三人で「一緒に何かやってみようよ」と話したことがきっかけとなって、まずは一緒にライブをやろうとしてたんですけど、どうせならリリースもしたいなと思って。それが決まってから本格的にこの曲を作り始めました。

奥原祐太(Gt, Key)
奥原祐太(Gt, Key)

— お話を伺っている感じだと、どうやらみなさんはかなり親しい間柄のようですね。立川さんも本名さんも同年代なんだとか。

奥原:三人とも同い年なんです。もう5年くらい前のことなんですけど、とあるイベントに遊びに行ったときに、そこで吉笑くんと本名くんが出演しているところを見て、「この二人、めちゃくちゃおもしろいな!」と。その当時から「落語と興幻◎しと音楽を組み合わせた何かがやれたら、きっとものすごいことになる!」と、ずっと思ってたんです。それが今回の作品につながりました。

— では、まずはその落語についてお伺いします。主に奥原さんは落語のどんなところに惹かれたんですか?

奥原:僕が落語を聞いたのは、そのイベントが初めてだったんですけど、そのときの吉笑くんは道灌(若手落語家が訓練のために演じる「前座噺」の1つ)をやっていて、それが本当にすごかったんですよ。というのも、道灌の噺自体はそんなにおもしろいものじゃないんですけど、吉笑くんの道灌は、初めて見た僕にもめちゃくちゃおもしろく感じて。それを機に吉笑くんの活動をチェックするようになったんですけど、そうしていくうちに、彼がものすごく数学的な落語をしていることがわかってきたんです。

立川吉笑
立川吉笑

— 数学的?

奥原:うーん、何て言えばいいですかね……とにかく、普通の落語じゃないんですよね。お笑い芸人で言うと、ラーメンズやバカリズムみたいな、すごくロジカルなものを吉笑くんの落語からは感じられる。そこが僕はおもしろかったし、それって自分たちのやってる音楽と似たところもあるんじゃないかな、と。

— シンパシーを感じたんですね。そして、さらに気になるのが「興幻◎し」です。僕はこれがどういうものなのか、まったくわかってないんですけど。

奥原:僕も当時はまったく知りませんでした(笑)。実際、興幻◎しという呼び名は本名くんが考えついたものらしくて、まだ全然表立った活動はしていないんですけど、これが本当にすごいんですよ。興幻◎しは、目を瞑った状態、言わば視界が完全に遮られた状況で体感するものなんですけど、そこで本名くんはギタリスト顔負けな数のエフェクターを並べて、一人で何人もの役を演じながら、おもしろいお話を展開させていくんです。これがもう、凄まじいんですよ。

本名竜也
本名竜也

— それはおもしろそう。その興幻◎しに対しても、奥原さんは自分の音楽に通じる何かを感じたんですか。

奥原:興幻◎しに関しては、ちょっと落語とはベクトルが違うかな。ただただ、「これはおもしろいぞ!」と思いました。この人と何か一緒に取り組めたら、すごいものができるんじゃないかっていう漠然とした予感があったんです。

How to count one to ten『Method of slow motion』(CD)

How to count one to ten『Method of slow motion』(CD)

2014年10月8日(水)発売
kiwiport / DQC-1364
1. idyllic
2. idyllic landscape
3. swimming pool
4. parade
5. news paper
6. balance
7. an association game+1
8. mathematics;re
9. time goes by
¥2,000(税込)

ライブ情報

『Elephant gym(from 台湾)×How to count one to ten - ダブルリリースツアー』
2014年10月17日(金)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-NEST
出演:
How to count one to ten
Elephant Gym
skillkills
a picture of her
hue

2014年10月18日(土)
会場:大阪府 難波 Rockets
出演:
How to count one to ten
Elephant Gym
cloud nine(9)
Card
cetow

2014年10月19日(日)
会場:愛知県 名古屋 spazio rita
出演:
How to count one to ten
Elephant Gym
Slavedriver
palitextdestroy

※各会場にて11月8日『間、或いは行間』の手売りチケットを販売。購入者全員に11月8日会場にて、『mathematics;re』インストバージョン特典CDをプレゼント。

『間、或いは行間』
2014年11月8日(土)
会場:東京都 六本木 SuperDeluxe
出演:How to count one to ten
ゲスト:
本名竜也
立川吉笑
※ 『mathematics;re』の実演を披露。

ARTIST INFORMATION

How to count one to ten(はうとぅーかうんとわんとぅーてん)

How to count one to ten(はうとぅーかうんとわんとぅーてん)

奥原祐太(Gt, Key)、南塚洋介(Dr)、矢口泰地(Gt)、和田真由子(Ba)、林俊輔(Gt)によるポストロックバンド。
僕らの音楽は歌がない。さらにはリードパートもない。主役がいない音楽といっても過言ではない。 各パートが脇役をこなし、1つの主題となるメロディーを作り出す。各パートそれぞれが楽曲の解釈、すなわちピッキングのポイント、 強弱、タイミングを深く考察し、2,000メートルの深海に潜るように息を止め、集中という名の圧力に変えてゆく。潜れば潜る程、リズムのズレは明確になり、超繊細な音符間のニュアンスが体感できるようになってくる。すると時間の感覚がぐっと引き延ばされ、1秒が限りなく遅く感じてくる。BPM180 の曲でも 0.1秒の『間』がとても長く感じ、また重要性を帯びてくる。そこに生ずる『間』を体現するのが僕らの音楽の大切な 1つの要素だと思っている。それは5人という限られたコミュニティにおいての察する精神、つまり、『間』を捉える音楽であり、5人が同じ深度で潜り続ければそれは素晴らしい音楽になるが、まだ実現はできていない。 しかし、目指しているのはそこである。

OTHER FEATURES