見えないものを信じる力 フレデリック×柏原譲対談

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:田中一人(2014/3/12)

もうみんなきっと気づいている。「~っぽい」や「~風」の、インスタントな感動はもういらない。それよりも僕らが欲しいのは、頭をハテナマークで埋め尽くす、ときに嫌悪感すら覚えるような、未知との遭遇だ。長い時間をかけてそれを紐解き、自分なりの解釈を加えたとき、そこに初めて本当の感動が生まれ、替えのきかない人生の一部になる。ミニアルバム『うちゅうにむちゅう』でデビューを果たす神戸出身の4ピース「フレデリック」は、そんな本当の感動を、本当の自由を追い求めるバンドである。

今回はフレデリックと、アルバムのプロデューサーを務めた柏原譲(Polaris / フィッシュマンズ)との対談をお届けする。フレデリックとフィッシュマンズ、さらにはインタビューの中で登場するたまやDEERHOOFといったバンドは、初めて聴いたときには誰もが軽いショックを受けるぐらいの個性派であり、一度気になり始めたら抜けられない、強い中毒性を持ったバンドたちである。彼らの個性は決してポーズではなく、あくまで自分たちがやりたいことを楽しんでやった結果のものであり、そこが聴き手を強く惹きつけるのだ。アートですら情報としてスピーディーに流れて行ってしまう現代における、「長く心に残る音楽」を巡る対話は、とても意味のあるものになったと思う。

大学時代に友達と夜遊んで、車でドライブしたりするときに、一番よくかけてたのがフィッシュマンズでした。(こーじ)

— こーじくんはもともとフィッシュマンズの大ファンだったそうですね。リアルタイムの世代ではないと思うけど、どうやって知ったんですか?

こーじ(Ba / Cho):姉が今33歳ぐらいなんですけど、まだインディーズの頃のSUPER BUTTER DOGをライブハウスに見に行ってたような音楽好きで、その姉からの影響が大きいです。大学時代に友達と夜遊んで、車でドライブしたりするときに、一番よくかけてたのがフィッシュマンズでした。

“frederic”
こーじ(Ba / Cho)

柏原:結構よくあるパターンだね。

こーじ:そうなんですか?(笑)

柏原:友達の家で電気消して真っ暗にして聴いてたとか、そういう感じが多いんですよ(笑)。でも、嬉しいです。僕は今45歳なんで、お姉さんがちょうど10個下くらいで、フレデリックのみんなはそのさらに10個下とかでしょ? すごいよね。

“frederic”
柏原譲

— 世代を超えて聴かれ続けてるってことですもんね。

柏原:そうそう。昔はストーンズとかRCサクセションとか、レジェンドだけの話だと思ってたんですけどね。

— 僕がフレデリックを最初に聴いて思ったのが、「変なバンドだな」ってことなんですね。もちろんそれはいい意味で、「何だろう?」って思うから、もっと聴いてみたくなる。それってまさに中高生の頃の自分にとってのフィッシュマンズでもあって、「何だろう?」って思って繰り返し聴いてたら、いつの間にか心に住みついて離れなくなってたんですよね。

こーじ:僕らがやりたい音楽もまさにそういう、長く心に残るようなものなんです。スッと抜けていってしまうようなものじゃなくて。

— フィッシュマンズっていうのは、こーじくんにとってのそういう存在でもあったと。

こーじ:はい、青春です(笑)。

柏原:知らなかった。今告白されてもなぁ(笑)。

— あれ? こういう話は今初めてなんですか?

こーじ:俺ちょっと照れちゃって、行けんかったんですよ(笑)。

最初はやっぱりケンジくんの声が……衝撃的に気持ち悪かった。(柏原)

— 柏原さんがフレデリックの音源を最初に聴いたときは、どんな印象を持ちましたか?

柏原:最初はYouTubeで“SPAM生活”を見て、「この人たち相当病んでるな」って思ったんだけど(笑)、でもここまでやるのはすげえなって思って。あと最初はやっぱりケンジくんの声が……衝撃的に気持ち悪かった。

ケンジ(Vo / Gt):これ、褒めてもらってるんですかね?(笑)

“frederic”
ケンジ(Vo / Gt)

柏原:もちろん。だから、正直最初は音楽そのものより声の印象が強くて、怖い人たちなんじゃないかと思った。「絶対言うこと聞いてくれないだろうな」って(笑)。

— ケンジくんは今のボーカルスタイルをどうやって作っていったのですか?

ケンジ:僕は専門学校のボーカル科に通っていて、「こういう歌を歌わねばならない」っていうのがだんだん確立されていってたんですけど、卒業手前ぐらいで「たま」に出会って、衝撃を受けたんです。「こんなに自由に歌う人がいるんや」って。それで、学校で教えられた定型のボーカルスタイルを捨てて、「自由にやろう」っていうことだけを考えた結果、今のスタイルみたいなのができていったんだと思います。

BRAND INFORMATION

フレデリック

フレデリック

双子の兄弟を中心として結成された神戸出身の4ピースバンド。そのユーモアと幅広い音楽的背景から生みだされる、"忘れさせてくれない楽曲群"とアッパーなライブパフォーマンスに中毒者が続出中。「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」4社合同オーディション"MASH A&R"初年度にて特別賞受賞。それから約一年。満を持して2014年3月12日に初となる全国流通アルバムをリリース。プロデューサーに柏原譲(Polaris/ex.FISHMANS)を迎え、代表曲である「SPAM生活」やライブでは既に馴染みの楽曲を現在進行形でパッケージングしたミニアルバムが完成。こいつを一度聴けば、フレデリックがあなたの耳に住み着きにやって来る。アルバム発売企画イベント「UMIMOYASU うちゅうにむちゅうだしろくじちゅう」(4月4日梅田シャングリラ/4月5日渋谷チェルシーホテル)開催決定。
柏原譲(かしわばら ゆずる)

柏原譲(かしわばら ゆずる)

東京都出身1968年生まれ。1980年代項半にフィッシュマンズのベース担当として活動開始。フィッシュマンズ活動休止後、2000年にオオヤユウスケ、坂田学らとPolarisを結成。2005年にはフィッシュマンズのメンバーとして復活ライブを行いフィッシュマンズとしての活動も再開。現在はSo many tears、OTOUTAのメンバーとして活動もする中、ミュージシャンのプロデュースなども行っている。

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