命短し、悩めよ乙女 amenotoインタビュー

「昨日生きていたかどうかだって、実際にはわからないじゃないですか?」

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2014/4/24)

小さい頃から人としゃべることが苦手で、言葉にできない思いを音楽に託し、それを通じて他者とコミュニケーションすることによって、自分を少しずつ変えていく……。極度の人見知りで、小さい頃から本やゲームに夢中になり、音楽との出会いによって、早くからミュージシャンの道を志した石井翠のソロプロジェクト=amenotoにも、一見この現代の女性アーティストの王道とも言えるストーリーが当てはまりそうに見えるが、彼女と現実との軋轢は相当に根深い。「昨日生きていたかどうかだって、実際にはわからないじゃないですか?」とさらりと言ってしまう、石井翠とはそういう人なのだ。

先日『ノイタミナムービー』として作品が劇場版アニメ化されることが発表された伊藤計劃など、SFやミステリーを読みふけることで、もうひとつの現実を見つめ、目の前の現実を疑うことを覚えた石井。もちろん、こういった感性を思春期特有のものと見ることもできるだろうが、現実に疑念を持つからこそ、その分濃く生きようと悩み、考えるということは、世代を問わず、重要なことだと言えるだろう。深沼元昭をプロデューサーに迎え、RADIOHEADやMUSE、SIGUR ROSなどに通じる叙情的でドラマチックな楽曲が詰まったデビュー作『すべて、憂鬱な夜のために』は、人生に思い悩むすべてのベッドルームに寄り添う、現代のサウンドトラックである。

SFとかって、現実逃避だけじゃなくて、違う世界なんだけど、現実を見てるみたいなところが面白い。パッと現実を忘れるだけとかだとあんまり……時間の無駄に感じちゃって。

— インタビューは今日で4回目だそうですが、少しは慣れてきましたか?

石井:全然ダメです、ホントに。苦手過ぎて、胃薬飲まないと(笑)。

“amenoto”
amenoto

— じゃあ、ゆっくり行きましょう(笑)。amenotoの紙資料や活動を見てると、「ネガティブ」というのがキーワードとして挙がっていることが多いけど、自分でも自分の性格がネガティブだと思いますか?

石井:ネガティブです……周りに言われるから、「ああ、そうか」っていうのもあるけど。ただ、ネガティブだから悪いと思ってるわけではないです。

— 何でそういう性格になったのか、自己分析したことはありますか?

石井:こうじゃなかったことがあったかな……うーん……。子供の頃は大人になったら治るっていうか、変わるだろうと思ってたけど、変わらなかったです。だから基本的に友達はいなかったですけど、ホントに小っちゃい頃は、従兄弟が近くに住んでたんで、一緒に遊んだりしてました。だけど、「明るく元気」みたいな感じではなかったです。

— 本はいつからよく読むようになったんですか?

石井:もともと好きだったんですけど、小5ぐらいのときにすごいはまって。最初はお兄ちゃんが読書感想文を書いてた芥川龍之介を借りて読んで、面白いなと思って。

— 何でそこまで本にはまったのでしょう?

石井:うーん……現実逃避みたいな感じ。ゲームとかももともと好きで、それと同じ感覚で。

— SF小説とかが好きっていうのは、つまりその逃避の感覚が強く味わえるから?

石井:SFとかって、現実逃避だけじゃなくて、違う世界なんだけど、現実を見てるみたいなところが面白い。パッと現実を忘れるだけとかだとあんまり……時間の無駄に感じちゃって。

“amenoto”

— つまり、本を通じて何かを考えるのが好きなんだ。

石井:はい、考えるのが好きです。

— じゃあ、学校の頃もクラスメイトとしゃべったりはしなかったけど、人間観察とかしてたんじゃないですか?

石井:友達同士で「昨日のテレビ面白かったね」みたいな話をしてる子たちがいると、「そういう話してどうなんだろう?」みたいに思っちゃうんです。「そんなことしてるなら、他にできることあるんじゃない?」って。

— 大人びてるというか、ませてるよね(笑)。それって例えば、親が教育熱心で、その影響とかなのかな?

石井:いや、勉強はちゃんとしてたけど、そんなに厳しくはなかったです。もともと自分が人としゃべらないし、しゃべっても話が合わないことが多くて、適当に「へー、すごーい、おもしろーい」って合わせる感じになっちゃうんで、「(他の人も)そうなんじゃないか」って目で見ちゃうのかも。特に、女の子ってグループ作るじゃないですか? そういうのがホント嫌で。

— そこに自分も馴染みたいとは思わなかった?

石井:思わなかったですね。馴染めないしどうしていいかわかんないっていうのもあるし、別に仲良くしなくても……いじめられるとかもなかったし、一人で楽しめたから、しょうがないなって思ってました。

BRAND INFORMATION

amenoto(あめのと)

amenoto(あめのと)

全詞曲を手がけるVocal&Guitarの石井翠のソロ・プロジェクトとして、2013年夏より始動。レディオヘッドをはじめとしたUKロックや、日本文学をルーツに描かれる、どうしようもなく冷たく乾いた世界。その寂しさの中で切ない激情を迸らせる石井翠の歌声が鳴り響く。2013年7月より新宿Motion、下北沢CLUB251、下北沢CLUB Que、渋谷eggman等を拠点に、UK直系のギター・サウンドを奏でる4人のバンド編成でライブ活動をスタート。2013年10月~11月、OTOTOYのUst番組"TV♭"の「編集長とamenotoちゃんの新譜の時間」レギュラー出演(全8回)。2013年11月7日、初の自主音源「amenoto ep」をライブ会場/配信/disk union限定で発売。同時に初のレコ発ツアーも東京/大阪/神戸/名古屋にて敢行。2014年1月号より、フリーペーパー「JUNGLE☆LIFE」にて連載ページ"amenoto 石井翠の徹底的にネガティヴ"開始。2014年4月23日、初の全国流通盤となるデビュー・ミニ・アルバム「すべて、憂鬱な夜のために」発売決定。

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