私たちは空を飛べないからこそ歩ける、チーナが見つけた真のHAPPY

和製Arcade Fireと呼ばれた前作から、進化を遂げたチーナの行く先

インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:矢島由佳子(2014/8/6)

<若者よ空は飛べないね> これはチーナの最新ミニアルバム『DOCCI』の1曲目を飾る“シラバス”の一節。バイオリン、コントラバスを含む個性的な編成から奏でるオーケストラルポップで、多くのミュージシャンからも愛され、これまで2度のカナダツアーを行うなど海外での評価も高いチーナ。前作『GRANVILLE』では、弦楽器のバンドであることを存分に活かしたサウンドと、ボーカル&ピアノを務める椎名杏子の豊かな感情表現でリスナーを魅了したが、約2年ぶりの新作となる『DOCCI』の制作は、タイトルにも現れている通り「これからチーナの音楽はどっちにいくんだろう?」という疑問から始まった。「初期の頃はとにかく前を向いて歩いて行けば間違いないと思っていた」という椎名が、それを全否定するかのような冒頭の一節を生み出すに至った心境の変化とは、一体なんだったのだろうか。そして「目指していたものが違うかもしれないと思ったときに自由になれると感じた」と彼女が話した通り、冒頭の一節は決してネガティブな意味合いだけの言葉ではない。何事にもウソのつけないチーナのメンバーたち(柴は欠席)に、今作に至るまでの素直な気持ちを語ってもらった。

椎名は、感性が全然違うんですよね。そっちの方が僕は新鮮で面白かったんです。(リーダー)

— チーナはとても珍しい編成ですよね。もともとどういう経緯で結成したんですか?

椎名(Vo, Pf):最初は私がソロで弾き語りをやっていたんです。でも、お客さんが全然いなくて、一人ではダメだなと思って、サポートメンバーとしてバイオリンの柴とコントラバスのえっちゃん(林)、あと当時いたパーカッションに声をかけたんです。

チーナ
椎名杏子(Vo,Pf)

— 当時は、音大に通っていたそうですね?

椎名:そうなんです。私はピアノ、二人は弦の専攻で、クラシックをやっていて。特に私はバンドのこととか全然知らないところから始めたので、本当にいろんな人に迷惑をかけていたと思います。

林(Ba):ライブハウスに出してもらっても、どうやってリハを進めていいかわからないみたいな(笑)。

チーナ
林絵里(Ba)

椎名:PAがなんのためにいるのかわからなかったし、イントロに入る前にドラムがカウントするのも知らなかったし、そもそもなんのためにライブをするのかも……。

リーダー(Gt, Syn):そこまでだったの!?

椎名:初めて自分でイベントを企画したときも、見に来てくれた人から「発表会みたいだったね」って言われて。バンドとして魅せるっていう感覚をつかむまでは苦労しましたね。

— そもそもなんでライブをしたいとか、ポップスをやりたいと思ったんですか?

椎名:大学では、めっちゃ一生懸命やってきたんですよ。それなのに、卒業が近くなると、急に先生たちが「これからはどこかの音楽教室で先生としてがんばってくれ」って、そういう道に進めたがるんです。その流される感じが嫌だったというか。やっぱり音楽はやりたかったし、クラシック専攻だったので基本的に人の曲をコピーしてきてたんですけど、自分で曲を作ってみたりとか、もっといろんな人と演奏してみたりとか、今まで知らなかったことをやってみようと思ったんです。

— バンドや歌手に憧れてとか、そういう感じじゃなかったんですね。でも、普通のバンドを知らなかったからこそ、こういう編成になったり、他と違うものができたっていうのはあると思うんです。

リーダー:僕はずっとバンドでやってきたんですけど、感性が全然違うんですよね。さっきもカウントする概念がないと言ってましたけど、「ワン、ツー、スリー、フォー」じゃなくて、(息を吸い込んで)「ふぅー」みたいな感じで曲を始めるんですよ。本当になにも知らない感じだったんですけど、そっちの方が僕は新鮮で面白かったんですよね。

チーナ
リーダー(Gt, Syn)

— リーダーはどういう経緯で入ったんですか?

椎名:しばらくは最初に話した四人で活動していたんですけど、1回レコーディングしようってなったときのスタジオのエンジニアが、リーダーだったんです。

— そもそも、なんで後から入ったのに、呼び名が「リーダー」なんですか?

リーダー:そのときは深夜にレコーディングしていて、みんな寝だしたんですよ。だから、「このテイクがよかった」とか、僕が勝手に進めてやっていたら「リーダーみたい!」って話になって、そこからリーダーと呼ばれるようになったんです。その後に「ギター弾けるならライブ出てよ」って誘われて、1年くらいサポートをやってからメンバーになりました。

— HAPPYさんは、まだ入ったばかりですよね?

椎名:ドラムは何回か代わっていて、ここ何年かはサポートを入れて活動していたんですけど、去年初めて公募という形で募集したんです。それでHAPPYが入って、流通するCDでは今回から叩いてます。

— 普通にホームページを見て応募したんですか?

HAPPY(Dr):そうですね。僕は地元が茨城で、『つくばロックフェス』っていうイベントでチーナを知ってファンになったんですけど、いつもチーナのライブを見ながら「ドラムの人が急に風邪引いて、誰かドラム叩ける人いませんか?」なんてことが起きないかなと思っていたんですよ(笑)。

チーナ
HAPPY(Dr)

— それまでは他のバンドで活動していたんですか?

HAPPY:経験はあったんですけど、しがない大学生で。卒業してから、しばらくフラフラしてたんです(笑)。ちょうど「これからなにしようかな……。」と思っていたときに募集があったので、フラフラしているところを拾ってもらったみたいな感じですね。

— そもそもなんで名前が「HAPPY」なんですか?

HAPPY:これも、元々はチーナファンだったことが関係してくるんですけど、初めてリハーサルに入ったときに、本当に楽しかったので、「チーナのみなさんと一緒にできてハッピーです」ってずっと言ってたんですよ。

椎名:「ハッピー」を連呼してたんですよ! この人本当に浮かれてるなと思って(笑)。

リーダー:それで僕が「ねぇ、ハッピーさぁ」って言ったら、「えー、ハッピーなんて名前いただいていいんでしょうか? 本当に嬉しいです!」って。気持ち悪いなと思って(笑)。

椎名:ぶっちゃけ、応募してくれた人のなかには、ビックリするくらい上手い人とか、いろんなバンドのサポートをやっている人もいたんです。でも、HAPPYはキャラで選んだというか、なんか拾ってしまったんですよね(笑)。

リーダー:でも、もともと募集をかけるときに、人としての部分で決めたいという話はしていたので、上手いかどうかにはあんまり重点を置いてなくて。

— でも、ファンとしてチーナを見ていたわけだから、チーナがどういう音を出すか知ってるわけですもんね。

HAPPY:そうですね!

椎名:すっごいドヤ顔したね(笑)。

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チーナ

チーナ

ピアノヴォーカル、ヴァイオリン、コントラバス、ギター兼マイクロコルグ、ドラムの5人から成る独特の個性を放つグループ。ポップス/クラシック/ロック/オーガニックといった要素を自由に操りオーケストラルな音が印象的で唯一無二の境地に達している。アコースティックな楽器編成だが枠にとらわれずダイナミックなサウンドから繊細な表現まで多様な演奏を得意とし、変幻自在かつ緻密な音楽性で独特な視点で捉えた歌詞やメロディーが特徴。ライブパフォーマンスもパワフルでハッピーでポップな「チーナ」の音楽世界を表現している。2012年7月に発売されたアルバム『GRANVILLE』に収録されている“アンドロイド”が、映画『まだ、人間』の主題歌に抜擢され、注目を集める。2013年5月にはmouse on the keys、きのこ帝国等とカナダツアーを行いチケットはソールドアウト。

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