DJ BAKUインタビュー 震災でさらに加速する「邂逅」
震災によって見つめ直した日本とは。
実に5年ぶりのオリジナルアルバム『JapOneEra』
インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2013/7/12)
2003年に制作がスタートし、2005年に発表されたDJ BAKUのドキュメンタリーにして、その後主催フェスのタイトルにもなるなど、彼の代名詞となった『KAIKOO/邂逅』。ジャンルを問わない様々なアーティストとの出会いが新たな表現を生むという邂逅のメンタリティは、あれから10年が経ち、YouTubeを通じて国籍も年代も問わない無数の音楽と容易に出会うことが可能となった今、より一般的なものとなったと言ってもいいかもしれない。そんな中、DJ BAKUが前作『DHARMA DANCE』以来、オリジナルアルバムとしては実に5年ぶりとなる新作『JapOneEra』を発表した。ラッパーやバンドマンとの交流を続けながら、ダンスミュージックを改めて見つめ直し、アニソンもプレイするなど、今もさらなる邂逅を続けている現在のDJ BAKUが明確に反映された、飛躍作だと言っていいだろう。また、ポルトガル語で日本原産の「椿」を意味する「ジャポネイラ」をベースとしたアルバムタイトルは、彼が本作に込めた震災後の日本に対する想いを象徴している。
ちなみに、僕はこの日の取材で初めてDJ BAKUと対面したのだが、彼は常に新しい表現に対してアンテナを張り巡らせているというわけではなく、常に自然体でいるからこそ、これまで様々な人との邂逅が生まれてきたのだということがよくわかった。彼と話していると、そのあまりのナチュラルさに、こっちもインタビューであることを忘れてしまい、久しぶりに会った友人と話をしているような感覚になってくる。実際に、「DJ BAKUのインタビュー記事」としてははばかられるものの、飲みの席とかで話すには抜群のエピソードも彼はいろいろと話してくれて、インタビュー中はとても楽しい時間を過ごすことができた。まだ、DJ BAKUの音楽に触れたことがない人は、これを機にぜひ彼との邂逅を果たしてほしい。
音楽を作る楽しさみたいなのが、やっと最近分かってきた気がしていて。
— 『JapOneEra』はオリジナルアルバムとしては実に5年ぶりの作品ですね。もちろん、この間にはHYBRID DHARMA BANDでの活動や、MIX CDのリリースもあったし、昨年はTHE MAD CAPSULE MARKETSのKYONOさんとのユニット「!!!KYONO+DJBAKU!!!」でのリリースもあったわけですが、いろんな活動をしている間に、気づいたら5年経ってしまったという感じなのでしょうか? それとも、本当はもう少し早く出したかった?
BAKU:まあ、いろんな話がある中で出せなかったっていう感じなんですよね。KYONOさんとは急に仲良くなって「何かやろう」ってなったし、ホントは『ILL BROS』っていうラップのアルバムを出そうとも思ってたり、志人くんとも1枚作ろうと思ってたんですけど、なかなか完成まで至らなくて、「そう言えば、ずっとソロ出してなかったな」っていう。
— そういう外的な要因もありつつ、ご自身の音楽性を見つめ直す期間にもなったのではないかと思うのですが?
BAKU:そうですね。最近引越しをしたっていうのも結構大きくて、それをきっかけにサンプリングのネタをきれいにしたっていうか、要らないものと要るものと分けて、ぶっちゃけレコードもちょっと売っちゃって、その代わりデータが増えたりして。
— 最近はデジタル技術の進化が著しくて、音楽を作る環境もここ5年で大きく変わったと思うんですね。その一方でBAKUさんはターンテーブリストでもあるし、アナログとデジタルの使い分けを考えることも多かったのかなと。
BAKU:大体スクラッチやってる人って、トラック作るの苦手なんですよね。最初から作曲家じゃないっていうか。だから僕も結構苦労してて、もうちょっと前はホントにターンテーブリスト的な考え方だったんですけど、最近になってやっと、音楽を作る楽しさみたいなのがわかってきた気がしていて。今はサンプリングを使いつつ、上から抜ける音でシンセを弾くとか、ベースラインがどう動いたらいいかを考えたりとか、そういう作曲の部分に楽しさを感じるようになりましたね。
— それは大きな変化ですね。
BAKU:前はパソコンじゃなくて、MPC(サンプラー)でトラックを作ってたから、音の分離みたいのもよくわかってなかったんです。それでも、エンジニアのところに行って、「ここはこうなんで、こうして」とかミックスの指示はしてたんだけど、そういうことが自分でできるようになった感じですね。
— 『JapOneEra』はこれまで以上にダンスミュージックのテイストが強い作品になっていますが、今おっしゃったような変化が、作風の変化とも関連していると言えますか?

BAKU:どうですかね……ダンスミュージックもだいぶいろんなジャンルが出てきたんで、音がそれに近くなるようにとかは考えたかな。でも、微妙なところなんですけど、もろダンスミュージックにしちゃうと、ぶっちゃけ日本じゃ売れないんじゃないかっていうのもあるんですよ。どっちでも使えるっていうか、家でも聴けるし、クラブでもかけられるっていう、そのいい感じのところを狙っていかないと、自分じゃないかなって気もして。ホントはサンプリングとか使わない方が音も抜けるんですけど、でも僕がそれをやるのも違うと思うし、やっぱり自分は元からあるものを組み合わせるみたいなことが得意だと思うので、そこはちゃんとやっていきたいと思ってましたね。
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