L.E.D.インタビュー 「バンド」になるための苦悩

7人の個性の集まりだったL.E.D.が、真のバンドに生まれ変わるまで。

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2013/5/8)

家族でも友達でも恋人でも、「以心伝心」の関係性になれたとしたら、それはとても素晴らしいことだ。しかし、現実はそう上手くはいかないもの。やはり、伝えるべきことはちゃんと伝えることが重要であり、それによって関係性は築かれていく。L.E.D.の新作『in motion』の制作も、まさにそんなコミュニケーションの本質が大きな鍵となった。「野外が似合う」と言われ続けたバンドが、遂に果たした『朝霧JAM』への出演。しかし、その後に待っていたのは、まさかの失速だった。そこからメンバーの関係性を見つめ直し、7人の個性の集まりだったL.E.D.が真のバンドに生まれ変わるまで。『in motion』という作品は、そのドキュメントだと言ってもいいだろう。その中にはSalyu、タナカカツキ、志人といった本作のゲストはもちろん、レーベルスタッフ、PA、デザイナーなど、バンドを取り巻くあらゆる人々との関係性も含まれているに違いない。そう、重要なのは、自分の意志を伝え、相手の意志を確認すること。なぜなら、いつだって人の心は移ろいゆくもの。まさに、「in motion」なのだから。


今回「ずいぶん制作期間長かったですね」ってよく言われるんですけど、停滞の時期が長かったんです。(オータ)

— 『in motion』はとてもオーガニックで、澄んだ空気感を感じさせる、美しいアルバムだと思いました。ラストに収録されている”morning mist”は、文字通り2011年の『朝霧JAM』に出演するタイミングで作った曲だそうですが、この曲がアルバム制作のスタートだったのでしょうか?

佐藤(Ba):朝霧に出たことで、バンドの活動もグッとペースアップするような感じがあって、すぐにアルバムを作ろうと思ってたんですけど……わりと時間がかかったっていう(笑)。

— やっぱり、『朝霧JAM』への出演はバンドにとって大きな出来事でしたか?

オータ(Dr):結成から数えればもう10年以上活動していて、小さなライブハウスのイベントに出るようなところからスタートしているので、ああいう大きな規模のフェスに出られるようになるっていうのは、サクセスストーリーまで言うと大げさだけど、L.E.D.史の中のひとつの山場という感じはありましたね。

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塩川剛志(Gt)

塩川(Gt):当日のライブも、とにかく気持ちよかったです。朝の9時ぐらいからリハをやらせてもらったんですけど、ギターを弾いてたら目の前に富士山が見えて、「俺富士山に向かってギター弾いてるよ!」とか思って(笑)。とにかく最高でした。

— 朝霧の出演後には、『Music For Cinemas e.p.』というこれまでの作品とはちょっとタイプの異なる作品のリリースがありましたが、あの作品から今作まではどう動いてきたのでしょうか?

佐藤:あの作品は「架空の映画のサウンドトラック」をテーマにして、ちょっと遊び半分で始めた企画盤だったんですけど、やってみたらすごく面白くて。なので、その流れでアルバムも作ろうと思ってたんですけど、その後いろいろあって……、このアルバムを作り出したときには「架空のサントラ」のことはすっかり忘れちゃってました(笑)。

— あれ? 意外と大変な状況だったんですか?

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オータコージ(Dr)

オータ:バンドに問題が起きて、いいライブができないことが続いたりして、せっかく『朝霧』に出たりいい感じにフライトしていたつもりが、失速し出しちゃったんです。それで佐藤も「これじゃあバンドを続けてる意味がない」ぐらいまで行っちゃって、もう「架空の映画のサントラ」とか言ってる場合じゃなくなっちゃったんですよ(笑)。今回「ずいぶん制作期間長かったですね」ってよく言われるんですけど、そういう停滞の時期が長かったんです。

— その停滞はなぜ起きてしまったのでしょうか?

佐藤:それまではバンドの活動もどんどん波に乗っていって、「細かいことは考えなくてもいいじゃん」ってノリで来てたんです。それが『朝霧』とかを経過して、メンバーそれぞれ曲に対するイメージが良くも悪くも膨らんできて、気が付いたらみんな違う方向を向いちゃってて。

— バンドに対しての意識が高まった分、独自の解釈が生まれてきた。

佐藤:そうなんです。それぞれが楽器の弾き方とかに違う解釈を無意識に乗せたりするようになって、バンドに一本筋があったのが、すごい有機的な塊みたいになっちゃって。

— それぞれに個性を持ったメンバーの集合体であるっていうのはL.E.D.のよさでもあったと思うんですけど、それが収拾のつかないところまで拡散してしまっていたわけですね。

オータ:たぶん、各々が意志を持ちだしたんでしょうね。なんとなく7人で旅行してるときはうまく行ってたけど、各々が「新宿行きたい」とか「スカイツリー見たい」とか言い出しちゃったっていう。セカンドまでは佐藤に何となく付いて行ってたんだけど、それぞれのL.E.D.への想い入れが強くなって、いろんな方向に動かしたくなってきちゃったんでしょうね。

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様々なフィールドでキャリアを有するメンバー7人により、2000年に結成。rock、funk、hiphop、house、dubstep、shoegaze、ambient、minimal、electronicaまで多様な要素をバンド独自の有機的フィルターを通して解体、再構築。既存のインスト、ポストロック勢とは明らかに一線を画す、映像を強くインスパイアさせる、まさにシネマティックなサウンドスケープを展開している。2009年にマンガ家であり映像作家でもあるタナカカツキとのコラボレーション(アルバムアートワーク、ライブVJ、PV)が話題となったファーストアルバム『Gaia Dance』、翌2010年にはバンド初のボーカルトラックにクラムボンの原田郁子を迎えた楽曲「I'll(アイル)」を含む2ndアルバム『elementum』、2012年にROVOの益子樹のミックス、マスタリングによる初のライブアルバム『in the universe』を発表。その間もCalm、moshimoss、YOGURT & KOYAS、DJ Funnel をリミキサー陣に迎えたremix限定アナログ盤のリリースなどと精力的に作品を発表。ライブも"朝霧JAM"、"頂フェス"、"NATURAL HIGH"、"OTONOTANI"、"FOREST JAM"、"ROOM"など野外フェスを中心に出演を重ねている。また、現代アートの新鋭?名和晃平の制作ドキュメント映像のBGMや、スノーボーダーで写真家でもあるニール?ハートマンの人気スノーボードムービー『Car Danchi』シリーズで2作続けて楽曲が使用されるなど、映像とのコラボレーションを軸に活動の場を広げている。

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