シャムキャッツ×サヌキナオヤ対談 何気ない日常を、故郷が美しかったことを、忘れないために

ホントに何でもないようなただの日常を切り取ったようなものができたら、シャムキャッツにとって居心地のいい作品になるかなって思って作ったのが『AFTER HOURS』だったんです。(夏目)

— 『TAKE CARE』は、前作『AFTER HOURS』の続編ということなので、改めて、『AFTER HOURS』のテーマから話していただけますか?

夏目:『AFTER HOURS』以前は、自分たちの中にあるフラストレーションや希望について歌ったりライブをしたりすることが多かったんですけど、それに対してちょっと疲労感が出てきて、このまま続けられないなって思ったんです。『たからじま』を出してから、あんまり他の音楽も聴きたくなくなっていたんですけど、唯一聴けたのがTHE SMITHSとかAZTEC CAMERAとか、日本だとネオアコ(パンク以降の新しいアコースティックサウンド)って呼ばれる人たちで。

— 海外だと、ポストパンクの範疇に括られますよね。

夏目:そうですね。なので、そこをベーシックにした音楽性で、「君のことが好きだよ」とか「あいつが気に入らない」じゃなくて、ホントに何でもないようなただの日常を切り取ったようなものができたら、シャムキャッツにとって居心地のいい作品になるかなって思って作ったのが『AFTER HOURS』だったんです。

シャムキャッツ

— それに加えて、浦安のご実家が液状化の影響で引っ越しをしたっていうのも大きかったそうですね。

夏目:そうです。液状化はずっと続いてて、今も工事してるぐらいなので、極端に考えれば、このまま「ここは人が住む土地じゃない」って判断を下されてもおかしくないと思ったんです。でも、故郷が美しかったことを、写真とかじゃなくて音楽として残しておければ、街に対してのレクイエムみたいなものになるかなって。

サヌキ:僕はイラストを描くにあたって、実際に浦安まで行ってみました。「ここが自分の生まれた団地で、メンバーとよく行ってたのがここで」という説明付きの地図を夏目くんに書いてもらって、それを見ながら写真を撮り歩いて、その写真やそのとき感じたことを基にイラストを描いたんです。

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『AFTER HOURS』ジャケット

夏目:贅沢だけど、曲ごとに絵がほしくて、描いてもらっているときはまだ歌詞ができてなかったんですけど、10曲の登場人物や背景を伝えて描いてもらったんです。このジャケットの字と枠自体は僕が作って、「この中に絵を入れてください」ってサヌキくんに発注しました。

サヌキ:「アートディレクション:夏目知幸」ってクレジットされてる通り、実際僕が絵を描いてるときは、ずっと横に夏目くんがいたんですよ。僕はデザイナーではないという自覚があるので、夏目くんに「ここの線もうちょっと長い方が」とか「ここの表情もうちょっとこうの方が」とか言ってもらいながら、合宿みたいな感じで作業しました。

— 夏目くんのイメージを具現化するような作業だったと。

夏目:僕のイメージというよりかは、「サヌキくんがこう描いたらこうなるはず」っていうイメージですね。

— バンドの曲作りと似てるかもしれないですね。「あいつがこのベースライン弾いたらきっとかっこいいだろうな」って考えながら作るみたいな。

夏目:まさにそうです。文化祭みたいな感じで、締め切りギリギリまで作業してたよね(笑)。

サヌキ:何日か一晩中描いてたもんね。

夏目: サヌキくんの描いてる横で、僕がレッドブル飲んでるっていう(笑)。

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世の中がどう転ぶにしても、自分がどうするのかってことは決めておかないといけない時代になってる気がするんですよね。(夏目)

— 『TAKE CARE』については、最初から明確に『AFTER HOURS』の続編という位置付けで制作に入ってるわけですよね?

夏目:『AFTER HOURS』がA面B面を意識した10曲だったので、今回の5曲がC面っていうイメージです。実は、タイトルはサヌキくんが決めたんです(笑)。

サヌキ:最初は『AFTER HOURS 2』っていうタイトルだったんですけど(笑)。もともと『AFTER HOURS』ってTHE VELVET UNDERGROUNDの曲名から取ってるから、今度はYO LA TENGOの曲名から取って夏目くんに提案したら「いいね」って。

— 『AFTER HOURS』の登場人物のその後っていうことなんでしょうか?

夏目:そういう捉え方ができるようにも作ってますし、まったく別の人物だと捉えてもらっても構わない作りにはなってます。ただ、舞台設定は変わってなくて、ひとつの街で起こってるオムニバスではあるんですけど、スピンオフみたいな5曲ってことではなくて、何か経過して、少し様子が変わっているのが出せればなって。

— まさに、そのムードの変化がジャケットにも反映されていますよね。ジャケットに描かれている女性は、憂いを帯びているようにも見えるけど、優しくて力強い眼差しをしてる。

シャムキャッツ
『TAKE CARE』ジャケット

夏目:最近は景色を描きたいと思って音楽を作っているので、最初は『AFTER HOURS』と同じように、人物は排除して抜けのいい感じのアートワークにしようと思ってたんですけど、録音が終わった段階で、もうちょっと誰かの気持ちに切迫していきたいというか、顔が見えるものじゃないといけないなって気分になったんです。

サヌキ:最初はもうちょっと叙情的というか、海を見てる男女を引きで描いてるくらいの何でもないような絵だったんですけど、その次に腰ぐらいまで見えてる女の子を描いて、そこからさらにどんどん寄って、最終的に顔だけになりましたね。

— 「誰かの気持ちに切迫しないといけない」と思ったのは、何が理由だったのでしょうか?

夏目:世の中がどう転ぶにしても、自分がどうするのかってことは決めておかないといけない時代になってる気がするんですよね。「どっちに転んでも世の中は素敵だよ」って匂いのする作品とか、「どっちかに転んじゃうのは嫌だ」って憂いを帯びた作品ではなくて、ちゃんと自分で決めてることを表すっていうか。強い気持ちを胸に秘めてる感じが出てないと、強度がない気がしたんです。

サヌキ:『TAKE CARE』は先のことを考えてるよね。『AFTER HOURS』は、何かがあって、そのあとの呆けてる時間だったけど、今回はジャケットの通り前を見てて、歌詞にもある通りこれから先のことを考えてる。「進む」ってことがテーマだと思ってます。いちばん最初に歌が入ってないオケと、その曲の説明書みたいなのを渡されたんですよ。なので、歌じゃなくてリズムがよく聴こえたっていうのが大きいと思うんですけど、“GIRL AT THE BUS STOP”の4つ打ちのリズムが、一歩一歩進んでる感じに聴こえたんですよね。今回の作品に対する僕の印象は、そこで決まりました。

— 僕は『AFTER HOURS』より『TAKE CARE』の方が不確かさが増してるように感じたんですよね。“WINDLESS DAY”のコード感や揺らぎは、それを表しているようにも聴こえた。だからこそ、「自分はこうだ」っていうのを決めないといけないし、一歩一歩確認しながら進まないといけないってことなのかなって。

夏目:うん、そうだと思います。「どうするべきだ」って歌いたいわけではないんですけど、ただ「踊り方は決めておいた方がいいだろう」ってことは伝えたいですね。どういう世の中になっても、身の振り方は決めておかないと、この先辛い気がするんです。このジャケットには、そういうことをわかってる女の子に見守っててほしいなって気持ちと、自分もこういう目をしていたいなって気持ちがあるのかな。

— すごくいい表情ですよね。

夏目:『風の谷のナウシカ』で、ナウシカが岩に座って遠くを見つめてる絵があるんですけど、それは宮崎駿がいちばん気に入ってるナウシカの絵なんですね。全然コマーシャルな絵じゃなくて、戦い疲れて座ってるだけの絵なんですけど、宮崎駿は「これがナウシカだ」って言い張ってる。今回のジャケットができたときに、それを思い出しました。ちょっと表情が似てるんですよね。

iPhone6/6Sケース「猫がいるだけで」

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シャムキャッツ
¥3,850
『ユースカ』第2号

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¥1,045
シャムキャッツ『TAKE CARE』(CD+イラストブック)

シャムキャッツ『TAKE CARE』(CD+イラストブック)

2015年3月4日(水)発売
価格:1,933円(税込)
P-VINE RECORDS / PCD-18785
1. GIRL AT THE BUS STOP
2. KISS
3. CHOKE
4. WINDLESS DAY
5. PM 5:00

イベント情報

シャムキャッツ『TAKE CARE』RELEASE TOUR
2015年3月27日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:広島県 4.14

2015年3月28日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:福岡県 天神 VOODOO LOUNGE

2015年4月4日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 得三

2015年4月5日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2015年4月11日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:北海道 札幌 ベッシーホール

2015年4月17日(金)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

料金:各公演 前売3,000円(ドリンク別)

BRAND INFORMATION

シャムキャッツ

シャムキャッツ

4人組のロックバンド、シャムキャッツ。2009年春、1stアルバム『はしけ』をリリース。その後、自主制作で次々と発表したCD-R作品は全てSOLD OUT。2012年冬、P-VINE RECORDSより2ndアルバム『たからじま』をリリース。収録曲“SUNNY”がテレビ東京系『モヤモヤさまぁ~ず2』のエンディング曲に起用される。2014年の3月、最新アルバム『AFTER HOURS』をリリースし、渋谷CLUB QUATTRO公演を含む全国ツアーを開催し大成功を収める。また、アルバムの好評を得て“MODELS/LAY DOWN”を7インチ・アナログとしてシングルカット、更には“AFTER HOURS”をLP化。10月には自主企画イベント『EASY』を成功させ、DeerhoofやMac DeMarcoなど海外アクトとの共演も重ねるなど、シーンの枠組みを超えた更なるブレイクが期待される。2015年3月4日に『AFTER HOURS』の「その後」を描いたニューミニアルバム『TAKE CARE』をリリース。全国6箇所のワンマンツアーを開催。
サヌキナオヤ

サヌキナオヤ

1983年京都生まれ。シャムキャッツ『MODELS』『AFTER HOURS』のアートワークや、ジオラマブックス発行の漫画誌『ジオラマ』『ユースカ』での漫画執筆など、イラストレーター / 漫画家として活動中。

OTHER FEATURES