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サウンドデザインが作る新しい世界 森永泰弘インタビュー

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2013/11/15)

「サウンドデザイン」という言葉を聞いて、どんなイメージが湧くだろうか? 「音を視覚的に捉える」というような、何となくのイメージは出てくるかもしれないが、なかなか全体像をイメージすることは難しいかもしれない。今回紹介する森永泰弘は、世界を飛び回って活動を続ける、日本有数の「サウンドデザイナー」だ。

彼が音楽を手掛けた映画は国際的な映画祭で数多く上演され、日本映画界の重要人物・園子温監督『恋の罪』では音楽監督も務めているほか、近年はコンテンポラリーダンスの分野においても実績を重ねている。また、フィールドレコーディングをライフワークとし、今年に入ってからは自らのレーベルCONCRETEを立ち上げ、「インドネシアのアデル」ことエンダ・ララスの作品を皮切りに、フィールドレコーディングのシリーズをリリースしていくというのだから、その活動範囲の広さは驚くべきものがある。では、そんな森永の言葉を頼りに、「サウンドデザイン」の魅力を探っていくことにしよう。そこにはきっと、新しい世界があなたを待っている。


誰かが理論を打ち出したら、今度は誰かがその理論を打ち破ることで、また新しい理論が出てくる。型にはめないからこそ、新しいものが出てくると思うんですよ。

— 森永さんは映画やダンスの音楽から、フィールドレコーディングなど、実に幅広い活動をされていて、「サウンドデザイナー」「サウンドアーキビスト」「ミュージックコンクレート作曲家」と肩書きも様々ですよね。ご自身では、自分のやっていることを紹介するときに、どんな言い方をしていらっしゃいますか?

森永:ジャンルや業界に捉われず、必要とされるところで、自分のアイデアを活かしたサウンドを作る仕事をしてるんですけど、なるべく「サウンドデザイナー」という言葉を使うようにしてます。でも今のところ、ウィキペディアで「サウンドデザイン」って日本語で調べても出てこないので、「もっと頑張らなきゃ」「いつか書かなきゃ」って感じてるんですけど(笑)。

森永泰弘
森永泰弘

— 確かに、「サウンドデザイン」と言われてもわからない人が多いかと思うので、ちょっと説明していただけますか?

森永:映画の方から使われ始めた言葉です。ウォルター・マーチという人がフランシス・フォード=コッポラ監督の『地獄の黙示録』で音響を担当した際に名付けたわけですが、今はデジタルメディアが出て色々な分野が交わってきているので、音楽や音響を作るのも、映像や舞台に音を配置していくのもデザインに近いやり方になってきているというところから使われている言葉だと思います。

— 以前は高価なレコーディングスタジオでの作業が必要だったのに、デジタルの恩恵で今は、自宅などでも気軽に音楽を作ったり、編集できるようになりましたもんね。

森永:はい。だから「サウンドデザイン」といっても、何か特定の手法や行程があるわけでもないし、まだ決まった定義もありません。例えば録音をするとき、マイクを置く位置で、キャプチャーされる音がドラマチックに変わることがあるんです。そういうのも、僕はひとつのデザインなんじゃないかと思っています。

— そうしたサウンドデザインに興味を持つきっかけは、音楽からですか? それとも、映像から?

森永:小っちゃい頃はダンスをやっていたので、まず身体表現に興味を持ちました。それで、高校生ぐらいのときにジョン・ケージやマース・カニンガムのことを教えてもらって、衝撃を受けたんです。その頃から日常生活の音を、作り手の解釈で新しい世界に置き換えるっていうことに興味を示すようになりました。

森永泰弘

— ダンスっていうのは、どんなダンスをしていらっしゃったんですか?

森永:初めはクラシックをやっていて、その後にストリートダンスに興味が移るんですけど、その時期の仲間たちとよく話していたのは「型にはめちゃうのは面白くないよね」っていうことで。その当時音楽もヒップホップとかジャズを聴き始めたんですけど、いろんなジャンルがクロスオーバーし始めた頃だったんです。そういう時代の流れの中で、ダンスよりも音楽や音そのものへの興味が強くなっていって。

— 「型にはめない」というのは、今の森永さんの活動までずっと繋がっている基本姿勢なのかもしれませんね。

森永:そうですね。型にはめないからこそ、新しいものが出てくると思うんですよ。もちろん、そこにはサウンドという土台があってのことですが。ただ、それは別に特定の分野や芸術といった領域だけじゃなく、学問や生活でもそうじゃないですか? 誰かが理論を打ち出したら、今度は誰かがその理論を打ち破ることで、また新しい理論が出てくる。だから、僕は周りにフィットするのが上手いタイプではなかったけど、その背景には「何でフィットしなきゃいけないんだろう?」っていう疑問があったのかもしれません。

森永泰弘

— 漠然とした違和感みたいなものを常に感じていたと。

森永:常にクエスチョンマークを持つように気をつかってました。外国人と対話をしてても、何か作品を作って、まず聞かれるのが「何であなたはこの作品を作ったのか?」っていうことなんですよね。作品を作るためのコンセプトや理屈を常に考えておかなきゃいけないし、それがなかったら、空っぽな作品だと考えられてしまう。なので、普段の生活の中でも、そういう疑問や理屈を常に考えるようにしていますね。そういうところで、色々な批評をされ、また何か違う見方を提示したいと思うんです。

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森永泰弘(もりなが やすひろ)

森永泰弘(もりなが やすひろ)

東京芸術大学大学院映像研究科に在学中から『カンヌ国際映画祭』『ヴェネチア・ビエンナーレ(美術部門)』、『ヴェネチア国際映画祭(短編部門)』のイベントでスペシャルライブを行うなど、国際的な注目を集める。映画や舞台芸術、メディアアート等の領域でサウンドデザイナーとして活動しつつ、南イタリアや東南アジアを中心に少数民族の音楽や環境音をフィールドレコーディングした作品を制作している。園子温監督『恋の罪』では、音楽監督を務めた。

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