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サウンドデザインが作る新しい世界 森永泰弘インタビュー

人間って絶対好奇心あるものだから。好奇心を持って、耳をオープンにしないと、本当に面白いものって作れないと思うんです。

— インドネシアの歌姫エンダ・ララスの作品を皮切りに、フィールドレコーディングシリーズのリリースも始まりますね。まずは、インドネシアの音楽シーンの魅力を教えていただけますか?

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森永:振付家でありダンサーの北村明子さんの作品『To Belong』で、「インドネシアでしばらくフィールドのリサーチします」って話になって、向こうの人とやり取りをしていく中で、どんどん面白さに惹かれていきました(詳しくはCINRA.NETに掲載された記事「インドネシアと大激突 北村明子×森永泰弘 対談」にて)。最初は普通のガムランしか知らなかったけど、ガムランを使ったロックがあったり、クロンチョンっていう、ポルトガルから植民地時代に流れてきたものを独自に解釈して作られた音楽とか、あるいはインドネシアってものすごい島の数があるから、島ごとに音楽スタイルが全然違うのも面白いんですよ。

— 確かに、あれだけ島があったらいろんな音楽ありそうですね。

森永:1960年代とか70年代は、大統領がロックを禁止していたんです。ロックバンドはずっと牢屋に入れられてたんですけど、大統領が退いて、そのバンドが出てきたら、すごい有名になったらしいんですね。その音楽を聴いてみると、THE BEATLESと変わらないぐらい面白いんですよ。逆に、大統領がロックを禁止していた時代は、インドネシア語でマンボやボサノヴァ風のラテン音楽が流行していたようで、そういうのも面白かったです。

— 本当に面白そうですね。日本に入ってきていないものも多そうですが。

森永:当時のものは、CDにすらなっていなかったりするんです。だから現地の人たちとか、レコード屋さんとかに教えてもらったりしながら、逆に他の土地の音楽のことを教えたり、音楽を通じて信用とか友情を築いて、それでエンダとも出会えたんです。

森永泰弘

— 森永さんはフィールドレコーディングをやっていらっしゃるだけあって、その場所に実際行ってみることをすごく大事にされていると思うんですね。今ってネットで世界中のことを知ることができるけど、やっぱりそれは「体験」と呼べるものではなくて、実際に現地に行って、本当の意味で「体験」することっていうのが、すごく重要だと思うんです。

森永:それはめちゃめちゃ重要で、僕もYouTube見ますけど、「すげえなあ」って思ったら、「会ってみたい」って、誰でも思うと思うんですよ。それで実際に会って、「面白い音楽作ってるね! でも、俺だったらここをこうする」みたいな話をしてると、こっちのことも評価してくれたりして、そういう人たちとはどんどん繋がっていきますよね。まあ「何言ってんだこいつ?」みたいに思われることもありますけど、それは縁がなかったという話で(笑)。

— 今の若い子って、すぐに情報が手に入る分、表面的なところで止まってしまって、そこからさらに探っていくような好奇心が薄まってるのかなって、ちょっと思ったりもするんですよね。

森永:それは操作してる側、国や文化の違いといったことも関係していると僕は思います。だって、人間って絶対好奇心あるものだから。ただ、それをどのように興味や好奇心、それ以上のものへと誘導させていくか、ということではないのでしょうか? 今回のエンダのレコーディングにしても、フィールドレコーディングって、向こうの人たちからすれば「?」だったと思うんです。普段は通常のスタジオで録音してるのに、僕は「あなたにとって最も思い入れのある場所で録音しよう」って言ったんですよ。色々な話をして、自分のやってることの重要性を説明し、お互いがリスペクトできる関係になって、ようやくわかってもらえるわけです。

Bunga Anggrekでを試聴する

— 彼女のお父さんが所有していた、影絵の練習場で録ったそうですね。

森永:僕からしてみれば、そこで鳴いてるカエルやコオロギの音も、オーケストラの1つなんです。実際に録音してるときに、大きなトカゲがゲコゲコ鳴いて、彼らが演奏をやめちゃったので、「何で止めるんだ?」って言ったんですよ。「動物とコラボレーションしてるんじゃないか」って言ったら、「そうとは思わなかった」って言ってました。そういう風に好奇心を持って、耳をオープンにしないと、本当に面白いものって作れないと思うんです。

— そうやって自然ともコラボレーションしながら、思い出の場所で録ったからこその歌が、アルバムには入っているわけですね。

森永:音で勝負しているとはいえ、人間性が間違いなく出ると思うんです。僕は楽器を弾くわけじゃなくて、録音機とマイクロフォンを使うわけですけど、それでもやっぱり人間性が出てると思う。むしそ、その人間性を出させるようなディレクションができて、初めてこのシリーズが成り立つと思ってるんです。

森永泰弘

— いろんな場所の音楽の面白さを紹介するシリーズでもあるけど、主役はあくまでその人そのものだと。

森永:人間がいないと、音楽なんてできないわけだから。やっぱり大事なのは、人とのコミュニケーションなんですよ。

— では最後に、今後の活動について話していただけますか?

森永:来年からACC(アジアン・カルチュラル・カウンシル)の派遣芸術家として中国南部の雲南省や貴州省に6か月間行きます。そこで少数民族と言われている人たちの歌垣や呪術の音とか、民を専門的に録音しようと思っています。ダンスでは、2014年2月にマースカニングハムのダンサーだったフーファ・デモビリテという振付家の新作で音楽監督をします。映画では、昔から友人の加藤直輝の新作や、織田作之助さんの脚本で昭和33年からみる昭和88年という映画『あのひと』のサウンドデザインをやります。

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森永泰弘(もりなが やすひろ)

森永泰弘(もりなが やすひろ)

東京芸術大学大学院映像研究科に在学中から『カンヌ国際映画祭』『ヴェネチア・ビエンナーレ(美術部門)』、『ヴェネチア国際映画祭(短編部門)』のイベントでスペシャルライブを行うなど、国際的な注目を集める。映画や舞台芸術、メディアアート等の領域でサウンドデザイナーとして活動しつつ、南イタリアや東南アジアを中心に少数民族の音楽や環境音をフィールドレコーディングした作品を制作している。園子温監督『恋の罪』では、音楽監督を務めた。

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