moshimossインタビュー

人生観を変えたアイスランドへの旅
退屈だった故郷が特別な景色に

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2013/5/22)

アイスランドという国は、音楽ファンにとってある種の「聖地」である。あの雄大な自然環境から生まれる音楽は、アメリカともイギリスとも異なる独特の美しさをたたえ、BJORKをはじめとしたアーティストが世界中にファンを抱えていることは言うまでもない。5月にSIGUR ROSが、6月にMUMが相次いで来日し、ここ日本でも改めてアイスランドが盛り上がりを見せているように思うが、その中に日本人アーティストKosuke Anamizuによるソロユニット、moshimossの名前もぜひ加えてほしい。山梨県在住のAnamizuは、かつてテクノのレコードをドイツのレーベルからリリースしていたが、アイスランドへの旅によって人生観が大きく変わり、moshimossとしての活動へとたどり着いた人物。冷たさと暖かさが同居する神秘的な作風はアイスランドのアーティスト譲りだが、彼が実際にインスピレーション源としているのは地元・山梨の自然であり、そこには日本人としてのアイデンティティが確かに存在している。3年ぶりのアルバム『endless endings』は、あなたの感受性の扉を開くスイッチになるかもしれない。

遊び場がカラオケとかしかなくて、自分には合わなかったから、「つまらない生活をどう楽しく過ごすか」っていうことを考えたのかもしれません。

— 音楽活動のスタートはバンドだったそうですね?

moshimoss:そうです。中学のときはX JAPANが好きだったりして、ギターボーカルでロックとかパンクをやってました。でも、本当はもっとメンバーとガシガシやり合いたかったんですけど、結局自分のワンマンになっちゃって、だったら、1人で何かできないかなって思うようになって。それでまずシンセを買って、だんだんテクノに興味がわいてきたんです。

— 学生時代から何かしら表現欲求みたいなものがあったのでしょうか?

moshimoss:田舎の出身なんで、自分で楽しみを生み出すしかなかったのかもしれないですね。遊び場がカラオケとかしかなくて、自分には合わなかったから、無意識の中で「つまらない生活をどう楽しく過ごすか」っていうことを考えてたのかもしれません。

— シンセを買ったのは何歳ごろだったのですか?

moshimoss:初めてシンセを買ったのが19歳で、しばらくちんたらDJをしてたんですけど、きちんとした自分の作品を作ろうと思ったのは24歳になってからですね。24歳って厄年じゃないですか? それで「そろそろ気合い入れてやらないと」って意識したのをよく覚えてます(笑)。

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— 最初のリリースはいきなり海外からだったんですよね?

moshimoss:そうなんです。曲はずっと作ってたんですけど、人から評価されるのが怖くて、レーベルにデモを送ったりもしてなくて……。でも、そのままだと何も起きないし、初めてTraum(ドイツのレーベル)に送ったら、返事が来たんです。

— 海外志向が強かったんですか?

moshimoss:リスナーとしてはあんまり詳しくなかったから、レコード屋さんに行って「いいな」って思ったのを買う感じで、たまたま持ってたのがTraumとか、海外の音楽が多かったんです。Traumは自分のテイストにも合うと思ったし、住所が書いてあったから、デモを送ってみようと思って。

— 当時はまだデータじゃなかったんですね。

moshimoss:そうです。だからそのとき、『週刊少年ジャンプ』から『ジョジョ(の奇妙な冒険)』のイラストを切り取って、それにくるんで音源を送ったんです。いい悪い以前に、聴いてもらえなかったらしょうがないし、デトロイトのテクノかなんかの人が、サンドウィッチにデモを挟んで送ったとかいうのを聞いたことがあって、「じゃあ、『ジョジョ』に便乗しよう」と(笑)。

— それが見事にレーベルの人の目についたわけですね。ちなみに、第何部だったんですか?

moshimoss:ブチャラティとかが出てくる……5部ですかね。

— じゃあ、舞台はイタリアですよね(笑)。

moshimoss:ドイツじゃないですね(笑)。


自分が本当は何をやりたいのかわからなくなっちゃったんです。

— でも、初めて送ったデモがいきなりリリースにつながって、かなり自信になったんじゃないですか?

moshimoss:いや、結構フワフワしてて、実感が全然なかったんです。むしろその最初にリリースしたやつ以降は、その影に引っ張られちゃったというか、自分の作品に苦しめられる時代が来て。「自分のやりたい音楽はこうだ」って固まる前に、楽しいから夢中で作って、パッとできて、あれよあれよとリリースに至っちゃったんで、もちろん嬉しかったんですけど、わりとわけわかんない感じで。そこから、自分が本当は何をやりたいのかわからなくなっちゃったんです。

— スランプで曲が作れなくなっちゃったとか?

moshimoss:いや、ひたすら作ってはいたんですけど、全然楽しくないし、何をやってるのかよくわからないって感じで。当時アルバムを出すっていう話もあったんですけど、そういう状況の中でやってたから、やっぱり全然いいものができなくて、「これじゃないね」って、結局その話は流れちゃって。「確かに、そうだよな」って自分で思いつつも、かなりへこみましたね。ただ、それが逆にいいきっかけになって、「何がやりたいのかをはっきりさせよう」っていうモードに変わっていったんです。

— アルバムを出せなかったことが、変化のきっかけになったと。

moshimoss:今考えてみると、あのときアルバムを出せちゃってたら、もっと最悪のことになってたかもしれない。納得もできてないし、わけわかんないままリリースされてたら、またそのループの中でやっていかなきゃいけなかったのかと思うと、いいタイミングでピリオドが打てたのかなって気がしますね。

BRAND INFORMATION

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1979年 山梨県生まれ。音楽家。イラストレーターで、山梨の音楽レーベル、Neguse Groupを主催し、Kosuke Anamizu名義で、ドイツのTraumからProcessとのスプリットEPや、mule electronicからリリースした、ミニマルハウス・ダブなどの作品で知られる。2010年、サンフランシスコを拠点とするdynamophone recordsより「Hidden Tape No.66」をリリース。2011年には、L.E.D. feat. 原田郁子の「I'll」のRemix EPにリミキサーとして参加、CokiyuやGeskiaなどのアーティストを始め、リミックスワークも多数手がける。2012年にはmoshimossとしてFujirock Festival'12への出演を果たした。2013年5月22日、全世界が待望した新作「endless endings」がリリースされる。

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