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オオルタイチの楽しい(だけじゃない)音楽人生

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2013/9/6)

オオルタイチはもっともっともっと評価されてしかるべき音楽家である。これに関しては、声を大にして何度でも何度でも言いたい。ソロとウリチパン郡での活動を通じて、これまで彼が残してきた数々の作品は、打ち込みとバンド、非言語と日本語といった違いこそあれ、どれもがトラックメイカーとしての、メロディーメイカーとしての非凡な才能を感じさせるものばかりであり、なおかつ、そこには常に人間の持っている根源的なパワーのようなものが必ず刻印されていた。特に、2008年発表のウリチパン郡『ジャイアント・クラブ』と、2011年発表の最新ソロアルバム『Cosmic Coco,Singing for a Blllion lmu’s Hearty Pi』の充実ぶりは目を見張るものがあり、この2枚のアルバムを前後する形で作られてきた楽曲をまとめた初のリミックス集『僕の楽しい仕事』も当然素晴らしい。初めてリミックスを担当したトクマルシューゴの“Rum Hee”から、エクスクルーシブとなるファナ・モリーナとneco眠るのリミックスまで、前述の2枚の旨味がギュッと凝縮され、彼の才能を改めて確認することができる。また本作は、これまでの打ち込みによる「動」のパワーから、アコースティックによる「静」のパワーへと移行していく、オオルタイチにとっての大きな転換点とも言うべき作品となりそうだ。

民族性って誰もが無意識で持ってるものだと思うので、それを素のままで出したい。

— タイチさんのこれまでのキャリアを振り返って見ると、ビートや歌、言葉の変遷はもちろんありつつも、人間の根源的なパワーのようなもの、奥底に渦巻いている名付けようもないものが音として表されているということに関しては、一切変わりがないと思うんです。

オオルタイチ:その部分を意識的に出そうとしてるわけではないんですけど、自分が正直にのれたりとか、ホントにいいと思えるものが出るまで待つというか、そういう姿勢は一貫してあると思います。

オオルタイチ
オオルタイチ

— そうやって出てきた音に、あえて名称をつけるとしたら、それがタイチさんの代名詞のひとつとなっている「フォークロア」だというか、人それぞれが持っている民族性ということなのかなって。

オオルタイチ:そうですね。民族性って誰もが無意識で持ってるものだと思うので、自分が音楽を作るときは、その力が一番強いところを、素のままで出したいなっていうのはあります。

— そういう音楽に惹かれるのはなぜなのでしょうか?

オオルタイチ:それはもう、ホントに音楽を聴き始めたときまでさかのぼると思うんですけど、やっぱり他には代えがたいパワーを音楽からもらったというか……、初めてバンドで合奏したときに感じた興奮とか、そういう経験が大きいですかね。音楽に助けられてきた場面もすごくあったと思うし。

— 「自分で音楽を作りたい」という衝動に駆られた原体験はいつだったんですか?

オオルタイチ:作りたいっていうか、できるかもって思ったのは、BECKかもしれないですね。BECKが“LOOSER”を一人でやってて、めっちゃ衝撃やったんです。こんなやり方あるんだって思って、そこからMTRとか、多重録音の道具を知り出して。それまでは作るよりもコピーの方に重点を置いてたんで、BECKは作るっていう意味で取っ掛かりになってますね。

— それ以前にバンド経験はあったんですか?

オオルタイチ:バンドは高校のときに若干やってたくらいで、大学に入ってからはほぼ宅録ばっかりでしたね。趣味が合うメンバーを見つけられなかったし、それでも一緒にやってくれる人はいたんですけど、なんか申し訳ないと思って(笑)。「ここでシャウトな」とか言っても、向こう理解してないし(笑)。一人で音楽をやる方法を見つけたから、そっちの方がやりやすかったんでしょうね。

— APHEX TWINだったり、THE DOORSだったり、いろんな影響源はあったと思うんですけど、オオルタイチさんの個性を決定付けてるのは、やっぱりダンスホールレゲエだと思うんですよね。ダンスホールレゲエとはどうやって出会ったのですか?

オオルタイチ:もともとダブが好きで、その文脈でいろいろ聴いていって、ダンスホールを初めて聴いたのが、NINJAMANとかで(笑)。めっちゃダサいんですけど、「これ、突き抜けてるなあ」と思って、よく聴いてたんです。そのうちダンスホール自体にはまり出して、同時代のダンスホールを聴き出したらすごくかっこよくて、大学2、3年のときはダンスホールにどっぷりって感じでしたね。

オオルタイチ

— やっぱり、その「突き抜け感」が大事だったんですね。

オオルタイチ:そうですね、パワーっちゅうか、エナジーっちゅうか、バカさ加減っちゅうか(笑)。本人は真剣なんやろうけど、こっちから見ると面白いっていうような。生じゃなくて打ち込みだったっていうのも大きくて、トラックを作って、歌を乗せるっていうやり方はそこで覚えて。

— タイチさんの非言語的な歌っていうのも、ダンスホールのパトワ語が原型なんですよね?

オオルタイチ:それ以前にも、インプロビゼーションみたいな感じで、声を楽器のように使うというか、そういうことはしてたんです。あと、パトワ語の面白い響きがあって、このノリでもっと歌っぽく、普通にAメロ・Bメロ・サビみたいな感じでやったら面白いんちゃうかと思ったら、案外すんなりできて、そういう方に惹かれていきましたね。

ARTIST INFORMATION

オオルタイチ

オオルタイチ

1999年、エレクトロニックトラックの上に非言語の"歌"をのせるスタイルで活動を開始。2011年1月に最新アルバム『Cosmic Coco, Singing for a Billion Imu's Hearty Pi』をリリース。他ミュージシャンへのリミックス提供から舞台や演劇、アニメ作品への楽曲提供など幅広い。また、全30公演を超えるアメリカ/ヨーロッパツアーや韓国、台湾、シドニービエンナーレへの出演など、海外での活動も活発に行っている。Oorutaichi Loves the AcusticoPaz Nova Bandではオオルタイチのダンス/エレクトロニックフォーマットの音楽をボサノヴァ/アコースティックに解釈するというコンセプトをもと、に立ち上げられたバンドプロジェクト、東西きってのミュージシャンたちが集結。これまで蓮沼執太フィル、salyu×salyu、トクマルシューゴらと共演し、今回で5回目の公演となる。

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