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Qi Fang×田代敏朗対談 東京で活動する北京ガールが、美術家と語り合う等身大の想い

中国人の両親のもと北京に生まれ、日本で多感な中学〜高校時代を過ごしたのち、アメリカの大学で音楽やデザインを学んだQi Fang(チー・ファン)。英語、中国語、そして日本語を巧みに使い分けるこの新たな歌姫の1stアルバム『Exhibition #1』は、そんな彼女の複雑なルーツと優れたポップセンスが組み合わされた、まさに万華鏡のような作品だ。一方の田代敏朗は、抽象表現をベースとしつつも、どこか見るものを安らかな気持ちにさせる絵画で注目を浴びる九州出身のペインター。かつては「天才児」とも呼ばれたという彼の作品は、2014年末、名菓「ひよ子」で知られるひよ子本舗の新ブランド「DOUX D`AMOUR」のパッケージにも使われ、徐々に人々の生活に浸透しつつある。

一見、普通の人々とは異なる人生を歩んでいるかに映る二人だが、その歩みには、多くの人にも共通する様々な葛藤と、それを乗り越える決断があったという。ルーツや両親とどのように向き合うか、自身のエゴとどのように折り合いをつけるか、そして作品にとって受け手とはどのような存在か。Qi Fangのアルバム発表をきっかけにした対談は、二人の若い表現者たちによる、等身大の思考を記録するものとなった。今後の活躍が楽しみな彼らの声に、ぜひ耳を傾けてみてほしい。

インタビュー・テキスト:杉原環樹 撮影:柏井万作(2015/05/18)

私の親は文化大革命の世代なので、「音楽で食べる」という発想がなく、「音楽なんて趣味でしょ?」と言われ続けてきた。「無言の圧力」じゃなく、中国人は直接的にバンバン言ってきますから(笑)。(Qi Fang)

— まずはお二人のプロフィールをお聞きしたいと思います。Qi Fangさんのご出身は中国の北京市?

Qi Fang:そうです。北京で13歳まで育ち、中学校の途中で日本に来て、高校卒業までを過ごしました。その後、ロサンゼルスの大学に留学し、アートや心理学など興味のあるものを片っぱしから勉強したんです。ピアノは小さい頃からやっていましたが、作曲を初めて専門的に学んだのもこのロス時代。当時はクラシックに興味があり、少数編成のオーケストラのための曲を作曲していました。

Qi Fang×田代敏朗
Qi Fang

— オーケストラとは意外ですね。そこからなぜポップスへ?

Qi Fang:もともと好きなジャンルの幅は広いんです。高校のときはロックが好きで、バンドも組んでいました。今回のアルバムにもいろんな音楽要素がつまっています。それに、圧倒的な歴史の厚みを持った西洋の人たちに、クラシックで勝つのはなかなか難しくて。でもポップスに関しては、あらゆる国に独自のポップスがありますよね。そこでなら勝負できるかなと。それで、ロスの後はニューヨークの大学でデザインの勉強をしていたのですが、やはり音楽を諦められず、1学期を残して日本に帰ってきたんです。

— 日本に戻るという選択はなぜ?

Qi Fang:両親が日本にいたこともあるけど、中学から高校時代って人の人格形成の上でとても重要な時期だと思うんです。実際、当時周囲の人たちと話したことや、触れた文化が自分の中に残っている感覚があった。あまり主張の強いタイプじゃないので、日本の社会が向いているんです。人のエネルギーがすごい中国にいたら餓死していたと思う(笑)。

— (笑)。一方の田代さんは、九州のご出身ですね。絵に関してかなり早熟だったとお聞きしましたが?

田代:ファンちゃんのような華やかな経歴がなくて困るんですが(笑)、僕は佐賀県のごく普通の家庭に育ちました。たしかに小さい頃からよく絵は褒められたのですが、美術の道に自分で入った感覚はないんです。絵へのモチベーションが高かったわけじゃなく、通っていた美術系の専門高校も、先生の勧めで行ったくらいで。だけど一度その世界に入るとのめり込むタチなんですね。一方でファッションや音楽はもともと好きで、いまでも美術とそうした領域の間にあるような表現に惹かれます。

Qi Fang×田代敏朗
田代敏朗

— 客観的には、お二人とも順風満帆な人生を歩まれているように見えます。

田代:そんなことないです。ウチの父は地元の政治家で、母も含めて芸術的な志向性が全然なかったんですね。なので、僕の生き方への反発はすごく激しくて。

Qi Fang:私の親も同じ。「音楽で食べる」という発想がなく、「音楽なんて趣味でしょ?」と言われ続けてきた。「無言の圧力」じゃなく、中国人は直接的にバンバン言ってきますから(笑)。とくに私の場合、30代まで中国で過ごした両親とは育った環境が違うし、彼らは1960年代の文化大革命の世代なので「反抗期」がわからないんです。日本に来たとき、Thee Michelle Gun Elephantや尾崎豊の音楽を聞いて、「こんな音楽アリなんだ!」と驚きました。中国では先生に歯向かうような音楽は許されないから。

— 尾崎の歌詞みたいに、校舎の窓ガラスを壊して回ったら?

Qi Fang:速攻で警察が飛んできます(笑)。

田代:それは日本も同じでしょう(笑)。でも、フィクションとしてそれを表現することもできないんだね。

Qi Fang×田代敏朗

Qi Fang:うん。大学での専攻も学校側が決めて「配属」されるんです。それは私たちの世代にも少し残っていて、友達も「材料」という聞いたこともない学部に配属された(笑)。建築のマテリアルを研究する場所らしいのですが。とにかく、そうした保守的な世界観が当たり前の親に育てられたので、歌手になるのはすごく勇気のいる決断でしたね。

「田代 敏朗 オリジナルノートブック」

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田代 敏朗
¥2,160
「Qi Fang オリジナルトートバッグ」

「Qi Fang オリジナルトートバッグ」

Qi Fang
¥1,080
Qi Fang『Exhibition #1』

Qi Fang『Exhibition #1』

2015年4月15日発売
価格:2,970円(税込)
WOOLY ARTS
1. Exhibition #1
2. Wait
3. Calling
4. Once
5. Step
6. Color
7. Only
8. Measure
9. interlude
10. 九份
11. Print
12. Waltz

イベント情報

『GARO ROMANCE 2015』~ unevision de cet écho qui résonne en moi ~ 『ガロロマンス2015 』 ~ 体の中でずっと鳴る音~
2015年5月1日(金)〜 5月24日(日)11:00〜18:00
会場:NICA: Nihonbashi Institute of Contemporary Arts
料金:無料

出展アーティスト
田代 敏朗
SABRINA HORAK
NORIKO TAKEMORI

http://nicatokyo.com/program/3839/

BRAND INFORMATION

Qi Fang(ちーふぁん)

Qi Fang(ちーふぁん)

シンガーソングライター。北京生まれ。L.Aで音楽を学ぶ。現在は東京、福岡、N.Yなど拠点に活動中。中国語、英語、日本語を操り伸びやかな美しい歌声で多くの人を魅了し続けている。LOVE FMで「2011年最も印象深かったOA曲」に選ばれる。2012年10月iTunesで初配信した曲「Original」がiTunes vocalチャート1位を記録。2014年には福岡のサンセットライブに初出演を果たした。現在2つのラジオ番組、LOVE FMペルソナリージ~お気に召すまま~ (日曜14:40-15:00 )と、FM横浜 SUNDAY POCKET(日曜25:00-25:30)にポパイ発行人石渡健文氏と出演中。最新アルバム「Exhibition #1」はブルータス、ポパイ、ブルータスカーサ、ターザン、ナイロンジャパン、ミュージックマガジンに掲載される。5/24(日)15:00より、池袋タワーレコードにてインストアライブを開催。
田代敏朗(たしろとしあき)

田代敏朗(たしろとしあき)

大阪芸術大学映像学科。1980年佐賀県生まれ。佐賀県展洋画の部において史上最年少16歳で首席(県知事賞、山口亮一賞)受賞を皮切りに、数々のアワードにおいて受賞。上野の森美術館大賞展(2010)、トーキョーワンダーウォール(2011)、トーキョーワンダーシード(2012)。主な展示に六本木ヒルズ森アーツセンター「ARTIST BY ARTIST」(2003)、京都建仁寺「現世美術館展」(2006, 2008)等。2014年秋、ひよこ本舗の新商品でのコラボレーションに抜擢、注目を浴びる。

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