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Qi Fang×田代敏朗対談 東京で活動する北京ガールが、美術家と語り合う等身大の想い

聴く人が入れる隙間があるかが重要で、1回聴いて圧倒させるものよりも、何百回も聴けるもののほうがすごい。(田代)

— Qi Fangさんは、田代さんの作品をどうご覧になっていますか?

Qi Fang:2013年に、田代さんが『Sunset Live』という音楽イベントでライブペインティングをしているのを見たんです。そのパフォーマンスが衝撃で、制作中は縦に線を描いていたんですが、完成したあと、突然それを横に倒したの(笑)。普通、事前に用意された筋書きがあると思うじゃないですか? 最後の最後に、絵がまったく異なるアスペクトへとどんでん返しされて、とても印象的でした。

田代:筋書きは実はあるんです(笑)。日本で展示をしようと思ったら、高いお金を払って貸しギャラリーをレンタルして、宣伝も自分でやらないといけないので、とてもリスクが高い。一方でライブペインティングって、作品を知ってもらうツールとしてすごく効果的で。ただ、多くの人はもちろん自分の作品なんかに興味を示してくれないので、なんとか短時間で感動できる方法をと思い、さきほどの横倒しの行為を考えたんです。それを見たら、僕の名前を知らなくても、作品には少し興味を持ってもらえるのではないかと。

Qi Fang×田代敏朗

Qi Fang:私はまんまと引っかかったんですね(笑)。

— 田代さんの作品は、ひよ子本舗のお菓子のパッケージにも使われていますね。領域横断的にも見えますが、自分の活動はいわゆる現代美術に属すと思いますか?

田代:僕は、現代の人が「現代美術」という言葉を使うことに違和感を感じるんです。同様に、いまはカテゴリー優先の作家も多いように思うのですが、過去のアーティストの活動を見ると、シンプルに「美術」を商売にしている印象を受けるし、それがかっこいい。だから自分としては、「美術をやっている」という認識のもと、ファッションやデザインの領域から手を差し出されれば応える、開かれた態度でいたいですね。

Qi Fang×田代敏朗
左より『宇宙とからだ、踊る片鱗』/『凪の輪郭/ 開け放つ音』/『生まれ変わる朝、無意識のプールにて”』 - 田代 敏朗 2014

— エゴを表明する美術家像ではなく、社会の成員としての美術家像を重視されているということですね。

田代:人前で何かを発表すること自体、どうやっても自我からは切り離せないんですけどね。ただ、そこでいかに自分以外の人と手をつなげるかが重要だし、それを考えるのが描き手の責任かなと。ファンちゃんにも同じことを感じて、彼女の“Calling”という曲が好きなんです。これを聴くと、もう1オクターブ上の声も出せそうなんだけど、「このくらいが心地よいでしょう?」と、聴き手との接点を探している印象を受ける。そういえばファンちゃんはこのあいだ「高い声を出すのはスポーツだ」という名言も言っていたよね?(笑)

Qi Fang:名言ではないけど(笑)。日本にもありますけど、とくに海外のオーディション番組なんかを見ていると、いかに声を張るか、いかに高いキーを出すかが審査基準になっているんです。それはとても違和感があります。

田代:僕も超絶技巧的に描こうとは思わないし、それをやってもあまり意味がない。技術を学んだからこそ感じるのかもしれませんが、「抜く」ことのほうが覚悟はいると思います。聴く人が入れる隙間があるかが重要で、1回聴いて圧倒させるものよりも、何百回も聴けるもののほうがすごい。ファンちゃんの曲は後者の印象です。

— 絵の場合、超絶技巧的に描くこともできれば、反対に真っ白なキャンバスを出すこともできますよね。でも、それらは技術的、コンセプト的には際立っても、受け手にとって面白いかはわからないし、ましてや長く付き合える作品になるかは怪しい。お二人には、自分のやりたいことをやりつつも、一般的な受け手へのアプローチを探す姿勢が共通しているのかもしれません。そしてそれは、時代的な流れでもある。

田代:それを意識している人が、結果的には成功している気がします。

Qi Fang:時代がそうした考えを要請しているというのは、その通りかもしれません。以前に比べれば、アーティストたちも常識を踏まえるようになっている。人間ってエキセントリックなものに惹かれやすいと思いますが、かつてのように社会が混乱していた時代は狂気を美しく感じる感性があったけれど、今の人にはおそらくそれがない。

Qi Fang×田代敏朗

田代:僕もたまに、感情の掃き溜めみたいな絵を描くことがあるんだけど、次の日に見たらまったく面白くないんですよ。絵を買う人にとって、絵は生活を共にするものなので、買ってくれた人が長くつき合えるものを作りたい。

Qi Fang:そうじゃないと自分の愚痴になってしまうよね。愚痴を延々と聴かせるのも表現かもしれないけれど、それが「パフォーマンス」になっていないと見ていて苦しい。私も、昔は歌うこと自体が楽しくて仕方なかったんだけど、最近は「こういう要素を入れたらもっと良くなるかな」と、すごく聴き手の反応を気にするようになりました。人の感想に耳を傾けたり、ライブとしてのストーリー性にも気を配ったり。

田代:その意味では、つねに見えない誰かと絵を作っているのかもしれませんね。

「田代 敏朗 オリジナルノートブック」

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田代 敏朗
¥2,160
「Qi Fang オリジナルトートバッグ」

「Qi Fang オリジナルトートバッグ」

Qi Fang
¥1,080
Qi Fang『Exhibition #1』

Qi Fang『Exhibition #1』

2015年4月15日発売
価格:2,970円(税込)
WOOLY ARTS
1. Exhibition #1
2. Wait
3. Calling
4. Once
5. Step
6. Color
7. Only
8. Measure
9. interlude
10. 九份
11. Print
12. Waltz

イベント情報

『GARO ROMANCE 2015』~ unevision de cet écho qui résonne en moi ~ 『ガロロマンス2015 』 ~ 体の中でずっと鳴る音~
2015年5月1日(金)〜 5月24日(日)11:00〜18:00
会場:NICA: Nihonbashi Institute of Contemporary Arts
料金:無料

出展アーティスト
田代 敏朗
SABRINA HORAK
NORIKO TAKEMORI

http://nicatokyo.com/program/3839/

BRAND INFORMATION

Qi Fang(ちーふぁん)

Qi Fang(ちーふぁん)

シンガーソングライター。北京生まれ。L.Aで音楽を学ぶ。現在は東京、福岡、N.Yなど拠点に活動中。中国語、英語、日本語を操り伸びやかな美しい歌声で多くの人を魅了し続けている。LOVE FMで「2011年最も印象深かったOA曲」に選ばれる。2012年10月iTunesで初配信した曲「Original」がiTunes vocalチャート1位を記録。2014年には福岡のサンセットライブに初出演を果たした。現在2つのラジオ番組、LOVE FMペルソナリージ~お気に召すまま~ (日曜14:40-15:00 )と、FM横浜 SUNDAY POCKET(日曜25:00-25:30)にポパイ発行人石渡健文氏と出演中。最新アルバム「Exhibition #1」はブルータス、ポパイ、ブルータスカーサ、ターザン、ナイロンジャパン、ミュージックマガジンに掲載される。5/24(日)15:00より、池袋タワーレコードにてインストアライブを開催。
田代敏朗(たしろとしあき)

田代敏朗(たしろとしあき)

大阪芸術大学映像学科。1980年佐賀県生まれ。佐賀県展洋画の部において史上最年少16歳で首席(県知事賞、山口亮一賞)受賞を皮切りに、数々のアワードにおいて受賞。上野の森美術館大賞展(2010)、トーキョーワンダーウォール(2011)、トーキョーワンダーシード(2012)。主な展示に六本木ヒルズ森アーツセンター「ARTIST BY ARTIST」(2003)、京都建仁寺「現世美術館展」(2006, 2008)等。2014年秋、ひよこ本舗の新商品でのコラボレーションに抜擢、注目を浴びる。

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