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Qi Fang×田代敏朗対談 東京で活動する北京ガールが、美術家と語り合う等身大の想い

かつてならば、言語ごとに3枚のアルバムを作らなければいけなかったかもしれないけど、その必要がなくなり、自由度が高まったのは良いことだと思います。(Qi Fang)

— Qi Fangさんは、歌詞に英語、中国語、日本語の3か国語を使っていますよね。言語はどのように使い分けるんですか?

Qi Fang:メロディーやリズムに従って、ですね。中国語の歌の韻の踏み方は、当然ながら日本語とは違うので。中国ではよく、日本の曲に中国語をつけて歌うことがあるんですが、あまりうまくいっている例は見たことがないんです。

— そうなんですか?

Qi Fang:たとえばKiroroの“長い間”も向こうで流行った曲のひとつなのですが、中国語のバージョンはぜんぜん良くないんです。あの曲は「なーがいあーいーだー」と、少ない音数で聴かせるからこそ良いのに、中国語に変えると言葉の音が多いんです。それと同じで、私も音の表情に合わせて言語を決めます。普段は日本に住んでいるので、浮かぶのは日本語に合った曲が多い。でも、英語で映画を見たときとか、中国人の友達とおしゃべりしたときとかは、そのあと、それぞれの言語に合った曲が出てきます。

Qi Fang×田代敏朗

— それは面白いですね。制作の順序としては曲が先で詞があとなんだけど、そもそもの曲が生まれる源には、そのときに使っていた言語があると。

田代:そのモードが3個もあるのは、本当に素晴らしいですね。

— ただ、3ヶ国語の詞を収めたポップミュージックというときに、そこで受け手として想定されている「大衆」がどのようなものかが気になります。当然、日本にはその3つの言語に通じている人というのはそんなに多くはないわけで。

Qi Fang:それは、アルバム全体としてはまったく考えていないですね。それぞれの曲が、個別の受け手に届けばいいと思っています。いま、CDを丸ごと聴く人はそんなにいないですよね。私自身、iTunesで1曲だけ買うことがよくあります。アルバムは、全体として自分を代表しているものだとは思うのですが、聴く人にそれを押し付けようとは思わないし、自由にピックアップしてもらって構わないんですね。

— その感覚は発信者として新しいですね。

Qi Fang:かつてならば、言語ごとに3枚のアルバムを作らなければいけなかったかもしれないけど、その必要がなくなり、自由度が高まったのは良いことだと思います。それに、人って育った環境で趣味嗜好が大きく異なる。これは私の偏見かもしれないけど、中国人は意外と暗い曲が好きなんです。「朝、さわやかな気分でボサノヴァを聴く」みたいな文化がないので、演歌とかバラードっぽいものを好む。それにすべて合わせたら今回のようなアルバムはできません。でもそれを省いたら、自分のアルバムにはならない。

結局、ジャンルに関係なく、作家の普段の思考の健康性は必ずその作品に出るものだと思うんですよ。(田代)

— なるほど。自分の出自とアルバム全体のアイデンティティーは重ねつつも、曲の選び方は受け手に委ねているわけですね。ちなみにニューヨークではデザインを学ばれたとのことですが、そうした経験が自分の作品に影響していると感じますか?

Qi Fang:受け手の存在についていろいろ言いましたけど、私にとって音楽は、究極的には直感で作るものなんです(笑)。でも、デザインはそうではなく、同じメッセージでもたくさんの選択肢があって、より有効な手段を選ぶことがある。とくに私が通っていた学校では、クライアントの重要さをすごく叩き込まれたんですね。だから、受け手に対する意識はデザインから学んだものかな。そのお陰で、人に理解できない音楽にはなっていないと思います。でも、田代さんは時代によってモードを意識的に切り変えられているけれど、私は昔からそんなに変わっていない。成長していないのかもしれないけど(笑)。

— たしかに田代さんの2000年代の作品は、今の作品とはまったく違って、けっこう痛々しい印象を与えるものが多いですよね。変化のきっかけはあったんですか?

田代:それはやはり、2011年の震災が大きいです。おっしゃる通り、それ以前は作品を見てほしいというより、作品を通して自分を見てほしかったんだと思う。でも、僕はそんな人をアーティストとは呼ばないようにしているんです。自分の人間性をアピールしたいだけなら、SNSでもできるわけで。ただ、震災後にボランティアに行ったりするなかで、自分がどれだけ独りよがりな存在だったかを思い知ったんですね。それで、エゴをなくす練習をしたんです。簡単なことだけど、受け取る人のことを考えて筆もしっかり洗うようになった。そのとき自分でも驚くくらい優しい作品ができたんです。

Qi Fang×田代敏朗

Qi Fang:私も、震災の直後くらいから本格的に音楽活動を始めたんです。それまでは、活動のやり方がよくわからないという甘えを自分に許していたところがあったけど、やりたいことのためにきちんとしよう、人にも会っていこうという意識の変化がありました。

田代:結局、ジャンルに関係なく、作家の普段の思考の健康性は必ずその作品に出るものだと思うんですよ。なので僕の場合、私生活のコントロールも始めました。制作前にジョギングをしたり、インスタントな人間関係を絶ったり。僕はビョークが好きなのですが、彼女の作品が見る人によっては痛々しいものであるにもかかわらず、きちんと受け手に伝わっているのは、彼女の私生活がとても健康的なものだからだと思います。

Qi Fang:作品は素直だからね。でも、田代さんの生活はストイックだなあ。私なんか、ライブの前の日くらいしかお酒は控えない(笑)。見習いたいですね。

「田代 敏朗 オリジナルノートブック」

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田代 敏朗
¥2,160
「Qi Fang オリジナルトートバッグ」

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Qi Fang
¥1,080
Qi Fang『Exhibition #1』

Qi Fang『Exhibition #1』

2015年4月15日発売
価格:2,970円(税込)
WOOLY ARTS
1. Exhibition #1
2. Wait
3. Calling
4. Once
5. Step
6. Color
7. Only
8. Measure
9. interlude
10. 九份
11. Print
12. Waltz

イベント情報

『GARO ROMANCE 2015』~ unevision de cet écho qui résonne en moi ~ 『ガロロマンス2015 』 ~ 体の中でずっと鳴る音~
2015年5月1日(金)〜 5月24日(日)11:00〜18:00
会場:NICA: Nihonbashi Institute of Contemporary Arts
料金:無料

出展アーティスト
田代 敏朗
SABRINA HORAK
NORIKO TAKEMORI

http://nicatokyo.com/program/3839/

BRAND INFORMATION

Qi Fang(ちーふぁん)

Qi Fang(ちーふぁん)

シンガーソングライター。北京生まれ。L.Aで音楽を学ぶ。現在は東京、福岡、N.Yなど拠点に活動中。中国語、英語、日本語を操り伸びやかな美しい歌声で多くの人を魅了し続けている。LOVE FMで「2011年最も印象深かったOA曲」に選ばれる。2012年10月iTunesで初配信した曲「Original」がiTunes vocalチャート1位を記録。2014年には福岡のサンセットライブに初出演を果たした。現在2つのラジオ番組、LOVE FMペルソナリージ~お気に召すまま~ (日曜14:40-15:00 )と、FM横浜 SUNDAY POCKET(日曜25:00-25:30)にポパイ発行人石渡健文氏と出演中。最新アルバム「Exhibition #1」はブルータス、ポパイ、ブルータスカーサ、ターザン、ナイロンジャパン、ミュージックマガジンに掲載される。5/24(日)15:00より、池袋タワーレコードにてインストアライブを開催。
田代敏朗(たしろとしあき)

田代敏朗(たしろとしあき)

大阪芸術大学映像学科。1980年佐賀県生まれ。佐賀県展洋画の部において史上最年少16歳で首席(県知事賞、山口亮一賞)受賞を皮切りに、数々のアワードにおいて受賞。上野の森美術館大賞展(2010)、トーキョーワンダーウォール(2011)、トーキョーワンダーシード(2012)。主な展示に六本木ヒルズ森アーツセンター「ARTIST BY ARTIST」(2003)、京都建仁寺「現世美術館展」(2006, 2008)等。2014年秋、ひよこ本舗の新商品でのコラボレーションに抜擢、注目を浴びる。

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