行達也(ルルルルズ)と語り合う、現代の日本ポップス事情

モナレコードの店長として現場を眺めてきた行達也が、ネット系ともリンクする珠玉のポップスを生む

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2014/5/20)

今年10周年を迎えたライブスペース・下北沢モナレコードの店長としても知られる行達也が、PawPaw(ぽーぽー)のボーカリスト・モミの声に魅せられて結成した新バンド・ルルルルズが、デビューミニアルバム『色即是空』を発表した。渋谷系の世代で、小西康陽に憧れながら、これまで裏方の道を歩んできた行が、リスナー的感性でのソングライティング能力を開花させて作り上げた、素晴らしいポップスの良作だ。
インタビュー中でも話していることだが、僕は現代をポップスの時代だと思っている。そこには誰もがYouTubeで過去の音楽を気軽に聴けるようになったことが大きく関係しているのだが、そんな時代だからこそ、行のように時間をかけて音楽を蓄積してきた人物の作る作品の素晴らしさもまた、クローズアップされるべきだと思う。そして、そんな行の蓄積と、モミをはじめとした若いメンバーの感性が混ざり合った年の差バンドであるルルルルズが、『色即是空』、つまりは「変わっていくものと変わらないもの」について歌うというのは、何だか妙にグッと来るものがある。

インディーズ担当のバイヤーだったんで、プロを目指してやってる人をずっと見てて、「プロなんかになるもんじゃないなあ」と思ってました(笑)。(行)

— 行さんはユメオチ(行を中心とした6人組のバンドで、2010年から2013年まで活動。ボーカルの寺岡歩美は現在sugar meとして活動中)以前から音楽活動をされていたんですか?

行:大学生のときにコピーバンドをやったりはしてましたけど、その頃は音楽の仕事をしようとかも思ってなくて、1回普通の画材屋さんに就職してるんです。その後にたまたまタワーレコードの募集を見て、やっぱり音楽の仕事がやりたいと思ってバイヤーを始めたんですけど、インディーズ担当だったんで、プロを目指してやってる人をずっと見てて、「プロなんかになるもんじゃないなあ」と思ってました(笑)。

“ルルルルズ”
行 達也(Guitar&Keyboard)

— 暗い部分も見てきたと(笑)。

行:光と影っていうか、実際は影ばっかりなんですよ。「(プロになる人は)ホントにごく一部なんだな」って思いながら、働いてました。

— そんな行さんがモナレコードの店長になって、なぜユメオチを始めたんですか?

行:ユメオチを始めるちょっと前に、モナに出てるアーティストのバックバンドをやってくれないかって話があって、そのときに曲を書いてみたら、「意外といいな」って思って(笑)。半径3メートルぐらいの中では結構評判も良かったんで、うちに出演してるミュージシャンの子たちに声をかけて、ユメオチを作ったんです。

— 「ちょっとやってみるか」ぐらいのノリだったのでしょうか? それとも、何かしら音楽をやることに対して意識の変化があったのでしょうか?

行:モナを始めて、レーベルもやって、いろんなアーティストのリリースをしていく中で、みんなファーストはすごくいいものを作るんですね。その次のセカンドっていうのは、もっと間口を広げるために、よりポップにした方がいいと思うんですけど、大体みんなコアな方に行っちゃって、それでこけるんですよ。そういうのを、「俺だったらこうはしないな」って思いながらずっと傍から見てたんですけど、それを思ったり言ったりするのもだんだん面倒くさくなってきて(笑)。

— 言われたところで、簡単には変わらなそうですし(笑)。

行:そう、それで「だったら、自分でやるか」って思ったのと、さっきの「曲書いてみたら意外と良かった」っていうタイミングが重なって、「じゃあ、やってみようかな」って。正しいセカンドの作り方を自分で証明できたら説得力もあるし……と思ってやってみたら、ユメオチはファーストで終わっちゃったっていう(笑)。

— よかった、それを行さんが言ってくれて(笑)。じゃあ、ルルルルズは絶対セカンドまで行っていただきたいですが、モミさんとはいつからのお知り合いなんですか?

行:彼女もモナにPawPawってバンドで出てて、僕は2011年のモナレーベルオーディションで初めてちゃんと聴いたんです。

モミ:その前からずっとお店には出演してたんですけどね(笑)。

行:PawPawもすごく良くて、そのオーディションでは審査員特別賞をとってCDも出したんです。そのとき僕はまだユメオチをやってたんですけど、彼女の声はすごくいいなって思ってて、モミちゃんからも「PawPawをやりながらもっとチャンネルを広げていきたい」っていう話を聞いてたんで、「じゃあ一緒にやろうよ」って。最初はモミちゃんのソロプロジェクトみたいな感じで二人で始めて、半年ぐらいかかってやっとライブができるようになりました。

大変ですよ、(モミの)おじいちゃんとおばあちゃんに僕が頭下げて、「大丈夫ですから」って説明して(笑)。(行)

— モミさんは昔から音楽をやられてたんですか?

モミ:クラシックピアノをやってたり、部活も合唱部とか吹奏楽部だったので、ずっと音楽には関わってたんですけど、ロックはあんまり知りませんでした。でも、父がプログレにすごく詳しかったり(笑)、母はフォークが好きで弾き語りとかしてたので、クラシック以外にもいろいろ聴いてはいたんです。

“ルルルルズ”
モミ(Vocal)

行:大学は音大に行ったんだよね?

モミ:「自分がやりたいことは何だろう?」って考えたときに、なんでかわかんないんですけど、急に「音楽しかない」と思ったんです。それで音大の音楽教育学科に入って、教育実習にも行って、教員免許も持ってます。

— でも、今先生をやられてるわけではないんですよね?

モミ:ちょうど卒業のタイミングでルルルルズが一歩踏み出せそうなところにいたので、やっぱりできるところまでバンドをやりたいと思って。

行:大変ですよ、おじいちゃんとおばあちゃんに僕が頭下げて、「大丈夫ですから」って言って(笑)。

— え! ご実家まで行かれたわけですか?

モミ:やっぱり心配はされるし、田舎なんで、インディーズとかって言ってもわからないんですよ。音楽で生活するって、「『Mステ』に出る」とかそういうことだと思ってる感じなんです(笑)。今は前より理解してくれて、応援してくれてるんですけど。

行:よかった、僕行ったときは「誰だこいつ?」って感じだったから(笑)。

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ルルルルズ

ルルルルズ

リリースからわずか1年足らずで解散した幻のグループ、ユメオチのソングライター行 達也が新たに結成したグループ。ユメオチのセンチメンタリズムを残しつつも、さまざまなアプローチで時代性にとらわれないポップミュージックを展開。indigo la Endを始め各所から客演の声が絶えないモミの透明感あふれるヴォーカルは唯一無二の存在感を放っている。

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