夏季休業のお知らせ

ボカロ界が輩出した稀代の音楽家 sasakure.UKインタビュー

音楽を作り始めた最初のきっかけは、ケータイ電話の着メロだった。

— sasakure.UKさんの作る音楽って、いい意味で、すごく変な音楽だと思うんですよ(笑)。変拍子とか転調とかガンガン突っ込んでいくし、一筋縄ではいかないっていう。このセンスはどういう風に培われたのかを訊きたいんですけれども。

sasakure.UK:まずゲームミュージックに影響を受けてますね。それが、今の8bitの音色を使ったり音を加工して使ってる作風に繋がっていると思います。あと、僕は学生の時に男声合唱をやってたんですが、それが現代的にも通用するかっこいい曲ばかりで、拍が4つじゃないんですよね。8分の9拍子、8分の11拍子になったりする。でもすごく音楽的でかっこいいし、ちゃんとストーリーになってるんですよ。そういうところからヒントを得てるんじゃないかと。



— ゲームミュージックと男声合唱の影響は、クロスするものだったんですか?

sasakure.UK:最初はあまり一緒に考えてなかったんですけど、最終的にクロスしましたね。男声合唱では、たとえば三善晃さんという方が書き下ろした楽曲を歌ったりしていて。すごく難易度は高いんですけど、心に刺さるかっこいい曲で、改めて自分の音楽の原点に立ち帰った時に、心地良いと思う音楽がそこにあったんです。ゲームミュージックのほうは、『サガシリーズ』の音楽を作った伊藤賢治さんから、スクウェア・エニックスのゲームミュージックの作り手さんが好きになって。自分の音色の好みは、そういうところから今に繋がってくるんじゃないかと思います。

— ゲームミュージックで言うと、初期のファミコンとかはどうでした? たとえば『ドラゴンクエスト』のすぎやまこういちさんとか。

sasakure.UK:確かにすぎやまさんもすごい好きですね。影響を受けていると思います。あと、ファミコンって3和音の制約の中で曲を作って展開させていて。そういう風に制約がある中で作る音楽がすごく好きなんです。僕、音楽を作り始めた最初のきっかけは、ケータイ電話の着メロだったんですよ。4和音の着メロを作れるっていうアプリがあって。

— ガラケーだ。

sasakure.UK:ガラケーです(笑)。そこで曲をコピーしたり、オリジナル曲を作ったりしたのが、音楽を作り始めるきっかけだった。そういうところも影響してるんじゃないかなって思います。

— そこから、自分の作った曲が他人の目に触れるっていう意識が生まれたのはいつ頃のことでした?

sasakure.UK:それは、音源とシーケンサーを買ってからですね。ヤマハのQY100という機械を買って、3ー4年ぐらい、独学でずっと曲を作っていたんです。その頃はインターネットが普及してきた頃で、僕も自分のホームページを作って、曲を公開するようになったんです。

— それはインストがメインだった?

sasakure.UK:そうですね。僕は基本インストだったんですよ。歌詞を書き始めたのはボーカロイドに触れてからだったんです。

sasakure.UKインタビュー

— 00年代の前半から中盤、ボカロとかニコ動が出てくる少し前って、チップチューンやフューチャーポップの盛り上がりもありましたよね。YMCKとか、プラスティック・スクイーズ・ボックスとか。あの辺はやっぱりリスナーとしてすごく刺激を受けていた?

sasakure.UK:かなり刺激を受けましたね。やっぱりそこの要素は大きいと思います。このアルバムの中にも影響を受けてる曲調の曲がいくつかあるんじゃないかな。

— sasakure.UKさんはボカロやニコ動が生まれる前からネットに自分のインスト楽曲を発表していたんですよね。そういう人にとって、ボーカロイドを使ってからの反響はどう感じました?

sasakure.UK:最初にニコニコ動画で楽曲をアップした時に、一瞬で100くらいコメントがついたことが驚きでしたね。時代の移り変わりを感じました。その場で感じたことがすぐに反響として返ってくる。それまでは聴いたらホームページの掲示板にいって、「初めまして、何とかです」とか書いてたんですよ(笑)。

— 確かに(笑)。

sasakure.UK:そういうのじゃなくて、「良かったよ!」とか「GJ」の2文字だけでも気持ちが伝わったし。ああ、新しい時代に入ったっていう予感を感じましたね。

なるべく情報量を多くして何回聴いても飽きないようにする。

— 僕、sasakure.UKさんの曲の最大の特徴って、情報量だと思うんです。3分や4分に、ひたすら音を詰め込んでいる。譜割りも細かいし、展開も細かいし、で、言葉にも物語性がある。時間あたりの情報量がとにかく多い(笑)。

sasakure.UK:確かに(笑)。それは自分でも自覚ありますね。

— これ、なんでだと思います?

sasakure.UK:なんだろう。作っていて、自分で飽きない曲にするというのはありますよね。自分がフレーズや音に飽きちゃったら、それはもう曲を作れなくなっちゃうんで。なるべく情報量を多くして何回聴いても飽きないようにする。何度聴いても楽しめる曲にするということは意識していると思います。

— いろんなところでいろんな音が鳴ってるのは、自分が面白いと思うためだという。

sasakure.UK:そうですね。

— 映像というところではどうでしょう? sasakure.UKさんの曲って、動画と合わせて見るとすごく伝わってくるような、映像的なところがあると思うんです。それも情報量の多さのおかげかもしれないと思うんですけれども。音楽と映像の関わりは、どういう風に捉えてます?

sasakure.UK:映像は僕の文字の情報をすごく広げてくれるものという感じですね。視覚的に見せることで多くのものを伝えられるっていう。今回はMVを複数のクリエイターさんに制作していただいたんですけど、どれもコンテを提示して、このシーンはこれでいきたい、みたいなところをちゃんと伝えたんです。あとはいろいろ作り手さんに任せたんですけれど。

— どれくらいきっちりと提示したんでしょう?

sasakure.UK:たとえば”トゥイー・ボックスの人形劇場”の展開や最後のシーンは、音を詰め込んだ時にだいたいコンテのイメージはできていたんです。自分の頭の中では、映像と一緒に音を作っている感覚はありますね。それを打ち合わせの時に話していきました。「ここはこういうシーン」とか、「こういう表情で」とか、細かく話をしました。



— では”蜘蛛糸モノポリー”は?

sasakure.UK:これは心象的な曲ですね。芥川龍之介さんの『蜘蛛の糸』を、自分なりに、未来的な解釈でアレンジした曲で。蜘蛛の糸を伝って空に昇っていくっていうのも、どこか未来っぽさを感じるなっていう、そういうイメージで作っていったんです。



sasakure.UK:『トンデモ未来空奏図』を作りながら、人って空に向かって進化していくんだなってことを思ったんですよ。昔の人が考えた未来の日本って、車が空を飛んでたり、パイプをつたって移動したり、いろんなものが空中に浮かんでたり、宇宙に届くエレベーターがあったりするじゃないですか。なので基本、上に向かって進んでいく、そういうイメージってすごく未来感と合うんじゃないかなって。

BRAND INFORMATION

sasakure.UK

sasakure.UK

幼少時代、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に、学生時代は男性合唱、文学作品に多大な影響を受け、その後、独学で音楽制作を始める。寓話のように物語の中に織り込められたメッセージ性を持つ歌詞と、緻密に構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。音楽のみならず映像やデザインも手掛けるマルチな才能が様々なクリエイターから高く評価されている。

OTHER FEATURES