ボカロ界が輩出した稀代の音楽家 sasakure.UKインタビュー

ネジが未来に進むためのキーアイテムみたいな存在。

— “ツギハギエデン”のMVには、ネジが登場していますよね。ジャケットのイラストにも塔の先端がネジになっている形で現れている。これは何かを象徴しているんでしょうか。

sasakure.UK:そうなんです。ネジが未来に進むためのキーアイテムみたいな存在なんですよ。未来へ進むシンボルみたいなものになっていて。

— “Mr.Wonderland”の歌詞の中にも<『未来はもっと明るく為れるはずさ』 僕は笑い 壊れたネジを回しはじめた>という一節がありますね。

sasakure.UK:そうなんです。実は、アルバムの盤面のデザインもネジになってるんですよ。ネジを回すというのは、人類が上の方向に浮かんでいくような、上の方向に反重力で移動しているっていうイメージなんです。

— ということは、作品全体のイメージともつながる。

sasakure.UK:そうですね。ICカードとかチップとかいろいろあるのになんでこんなに原始的なものなんだ? って思ったんですけど(笑)。いろんな人と話したりするなかで1つの結論に至ったのは、シンボルってものすごくシンプルかつアナログなものなんですよ。あと、これは小ネタなんですけど、ジャケットに描かれている高い塔は、実は太陽の塔がモデルになってるんです。あれも未来の象徴でしたからね。

— なるほど。そういう小ネタや裏設定をパッケージにも沢山盛り込んでいる、という。

sasakure.UK:盛り込んでますね。他にも一杯あります。

— そういうのって、自分のブログやホームページでいずれ全部種明かししようと思ってたりします?

sasakure.UK:いや、あんまり思わないですね。たまに、こんな風に「こういう小ネタが実はあります」とかそういう話はするんですけど、あんまり自分から全部これはこうなってて、みたいな説明はしないです。

— ってことは、先ほど話してもらったように、曲に一つひとつの音を細かく詰め込んでいるのと同じように、小ネタや裏設定も沢山詰め込んでるという。

sasakure.UK:そうですね。それは感じてほしいっていうのもあるし、考えてほしいっていうのもあるし、でも別に、曲が良ければどうでもいいじゃないかっていう気持ちもあるし。いろいろあるんですよね。たとえばお茶に喩えるなら、どこで採れた茶葉を何%使っているからとか、そういう情報はいらなくて、飲んだ時に「あ、美味しい」って思えればそれでいいんじゃないか、みたいな感じというか。

— 最近思うんですけど、こうやって沢山の要素を細かく詰め込んで、最終的にすごくポップなものになるって、すごく日本人らしいアートだと思うんですよ。浮世絵とかもそうだし。

sasakure.UK:あははは、確かにそうですね。あれもかなり描き込んでますもんね(笑)。

ボーカロイド作品を作る時は、ボーカロイドの背景を大切にしたい。

— では最後に、sasakure.UKさんが今のボーカロイドやその周辺のシーン、その未来をどう見ているかをお伺いできれば。

sasakure.UK:ボーカロイドのカルチャーというのは、当初からはだいぶ変わってきましたね。実はこのアルバムの隠れたコンセプトとちょっと合致するんですけど、みんなが明るい未来を目指してきたはずなのに、なんか今、そう不幸ではないはずなんだけれども、何かちょっと違うなっていう違和感みたいなものがあると思っていて。

— というのは?

sasakure.UK:たとえば、歌を歌うための仮歌ツールみたいな扱いがあったり、やっぱり人に歌わせたほうが全然かっこいいみたいな意見もあったりするんですよね。そういうことじゃなくて、それぞれがそれぞれで良いものだと思うんです。ボーカロイド作品を作るなら、ボーカロイドの背景を大切にしたい。この作品にもそういうメッセージ性みたいなものがちょっとありますね。

— なるほどね。言ってしまえば、いろんな人が自分の面白いと思うことをどんどん追求していってほしい。

sasakure.UK:そうですね。ボーカロイドはボーカロイドで良いものがあるし、人の歌声は人の歌声ですごくいいものがある。僕はどっちも肯定したいなと思っているんです。

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幼少時代、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に、学生時代は男性合唱、文学作品に多大な影響を受け、その後、独学で音楽制作を始める。寓話のように物語の中に織り込められたメッセージ性を持つ歌詞と、緻密に構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。音楽のみならず映像やデザインも手掛けるマルチな才能が様々なクリエイターから高く評価されている。

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