時代を牽引する25歳の写真家・奥山由之が語る写真と表現

現場が作り込まれたものであればあるほど、そこにポッと現れるリアリティーに真実味を見出せる。

— 奥山さんはファッション写真も手がけられていますよね。昨年12月に発売された雑誌『GINZA』では、すべてシチュエーションの異なる83枚の写真を撮り下ろして話題になりました。いま伺った「琴線に触れた瞬間を撮る」ことと、ファッション現場で求められることとは違う気もしますが、どういった意識で臨まれていますか?

奥山:お仕事における写真に関しては、とにかく「ドキュメント」と「フィクション」の入り混じるバランスを意識しています。完璧なフィクションというのは、写真において存在しないと思うんです。『GINZA』で撮ったファッション写真も、僕らがセッティングしている時点で、用意されたフィクションの世界なのですが、生身の人間が被写体になるということは、作り込まれたフィクションのなかにも必ずドキュメンタリー性を見出せる。そのバランスが不自然だと感じるものに、人は目を向けてしまう気がしています。反対に完璧に素の瞬間というのもなかなかなくて、こうやって服を着て外に出ている時点で、みなさん何かしら自分のキャラクターを日々演じているわけですよね。

— そうですね。

奥山:お仕事の現場では、被写体となるモデルさんや役者さんの方とは初対面であることがほとんどです。初めて会う人だから、僕に見せる表情にはフィクションが多く含まれている。友達を撮るような場面とは違うので、やっぱり最初は互いに相手の波長を様子見している感じがあります。けれど、その寄せては返す波のリズムが合ってくるときに、高揚が生まれます。そうすると、少し引いて見ればフィクションの空間であっても、そのなかに見え隠れするドキュメントの瞬間がスローで見えてくる。フィクションに満ちた現場で、みなさんが友達をスマホで撮るときの気持ちにどこまで近づけるかが勝負であって、その現場が作り込まれたものであればあるほど、そこにポッと現れるリアリティーに良くも悪くも現実が潜んでいると思うんです。瞬間の表現ならではの感情の拾い方だと思います。

奥山由之
『GINZA』 2016年1月号より

— 初対面の相手から、どうやってその表情を引き出すんですか?

奥山:人にもよりますが、たとえば被写体の方にずっとフリスビーをしてもらうとしますよね。すると、「フリスビーを受けて、投げ返す」という動作を繰り返すうちに、フリスビーにある程度は集中しなくてはいけないから、カメラへの意識が少しずつ薄らいでいく。その場合の「フリスビーを受け取ろうとした瞬間の表情」は、ドキュメントだと思うんです。でも、どこかには写されているという意識も残っている。複数の意識が混ざった表情にその人らしいバランスを感じる。

— 作ったのか素なのかわからないくらいが一番魅力的だと。なんか、わかります。

奥山:その混じり合いは瞬間ごとに割合が変わります。なので、どの点を捉えられるのかが、撮る側の「らしさ」です。瞬間を切り抜く写真という表現の醍醐味ですよね。完璧に作りこんだ表情を見せたいなら、絵やグラフィックのほうが向いていると思ってしまうんです。100%の作り物でも純粋なリアルでもない、だけどその場にたしかにあった瞬間的な表情を選択によって抜き取れるのが、写真の面白さ。そのフラフラとした意識の動きというのは、普段の人の感情にも似ていますよね。それが、結果として人間らしさであり、写真の特有の色気を生かした表現だと思います。


写真をアートの文脈だけに閉じ込めておくべきではないと思っているんです。

— またひとつの奥山さんの特徴に、デジタルカメラではなく徹底してフィルムを使う点も挙げられます。あえて手間も時間もかかるフィルムを使うのはなぜですか?

奥山:日頃撮るときも、お仕事でも同じなのですが、僕がフィルムで撮る最大の理由は、「撮ったその直後の温度感は、写真で撮ることの意味を軽減してしまう」ということなんです。たとえばいまこの場をデジカメで撮って、すぐに手元で画像を確認したら、僕はこの場所の温度感を感じたままで写真を見ることになりますよね。

— デジタルで撮るとそうなりますね。

奥山:でも最終的に写真集や、誌面、ポスターで写真を見る人は、この場の温度感を共有していない。人はコンビニで立ち読みをしたり、部屋で寝転がったりしながらその写真を見るわけです。一方、フィルムは撮影から時間が経ってから仕上がりを見るので、ある意味で最終的な受け手と近い状態で写真を見られます。いい意味でドライに見ることができると言うか。実際に、現場ではよく見えたものが仕上がりでは良くなかったり、失敗だと思っていたものが1週間後に見ると、その失敗も意外といいなぁ、みたいになるときもある。それが写真の面白いところだと思っています。瞬間の表現は、音も言葉も、匂いも無く、少ない要素で構成されているので、見るときによって見え方が大きく変わります。だから撮ってすぐに判断してしまうのは、写真の持つ魅力を消してしまっているように思うんです。自分や見る人にとって最良の瞬間がどこなのかを見つける上で、僕にはフィルムが向いているんです。

奥山由之

— なるほど。ただ、そうして一枚一枚を大切に撮る一方で、大量生産品であるTシャツやCINRA.STOREで販売中のiPhoneケースのような商品に写真を利用することもやられていまよね。その二つの間には距離があるとも感じるのですが、どのようにお考えになっていますか?

奥山:フィルムを使うことと、商品に写真を載せることは、写真の楽しみ方においてむしろ近いと思います。いまお話ししたように、フィルムに感じる面白さは、物質として残るがゆえに、見るときの気持ちや状況の変化が写真の見え方にも影響を与えるということですが、たとえばTシャツに写真を載せると、自分も予期しないほどにその見え方の幅が広がるんです。同じ写真のはずなのに、持っている人や着られている場面によって、まるで違う写真に見えてくる。商品への写真の転用では、そうした一枚の写真が持つ意味の広がりを、みんなにも感じとってもらえる。展覧会や写真集で見るだけが写真ではないし、僕は写真をアートの文脈だけに閉じ込めておくべきではないと思っています。

CINRA.STOREで販売中のiPhoneケース

iPhone6/6Sケース「Liquid」

iPhone6/6Sケース「Liquid」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Curtain」

iPhone6/6Sケース「Curtain」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Wheels」

iPhone6/6Sケース「Wheels」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Liquid」

iPhone6/6Sケース「Liquid」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Curtain」

iPhone6/6Sケース「Curtain」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Wheels」

iPhone6/6Sケース「Wheels」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Rose and Building」

iPhone6/6Sケース「Rose and Building」

奥山由之
¥3,780
iPhone6/6Sケース「Smoke」

iPhone6/6Sケース「Smoke」

奥山由之
¥3,780
iPhone5/5S/SEケース「Liquid」

iPhone5/5S/SEケース「Liquid」

奥山由之
¥3,780
iPhone5/5S/SEケース「Curtain」

iPhone5/5S/SEケース「Curtain」

奥山由之
¥3,780
iPhone5/5S/SEケース「Wheels」

iPhone5/5S/SEケース「Wheels」

奥山由之
¥3,780
iPhone5/5S/SEケース「Rose and Building」

iPhone5/5S/SEケース「Rose and Building」

奥山由之
¥3,780
iPhone5/5S/SEケース「Smoke」

iPhone5/5S/SEケース「Smoke」

奥山由之
¥3,780

BRAND INFORMATION

奥山由之

奥山由之

1991 年生まれ。大学在学中の2011年に、第34 回写真新世紀優秀賞受賞。受賞作『Girl』が2012年に写真集として出版される。2016年、写真集『BACON ICE CREAM』が第47回講談社出版文化賞写真賞を受賞。私家版写真集に『THE NEW STORY』『march』がある。

OTHER FEATURES