羊毛とおはな インタビュー やさしく穏やかな音楽の裏側にある、壮絶なぶつかり合い

二人組ユニットだからといって、お互いの意思が何でも通じ合っているわけではないし、意志を共有することだけが正しいデュオの形というわけでもない。こういう表現をすると誤解を招くかもしれないが、やさしく、穏やかな音楽性に反して、何度も壮絶なケンカを繰り返してきたという「羊毛とおはな」は、お互いを理解しきれないからこそ相手の考えに思いを巡らせ、作品をブラッシュアップさせてきた好例ではないだろうか。

結成10周年の節目にこれまでを振り返ってもらいつつ、「まるでリビングルームでライブをしているかのよう」をテーマに、デビュー以来リリースを続けている『LIVE IN LIVING』シリーズの最新作『LIVE IN LIVING '13』の話から浮かび上がる二人の関係性とは? あわや取材中にケンカ勃発かとこちらが焦るほど、二人の制作風景が垣間見れるインタビューをどうぞ!

インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作(2013/4/23)

「このまま実家から数キロ先の塾との往復で人生終わるのか」って想像したら、すごい嫌だったんです。それで、何のアテもないまま東京に出たんです。(はな)


— 今年で結成10年ということで、改めて結成の経緯から聞かせてください。はなさんはもともとジャズシンガーを志していたんですよね?

はな:はい。大学時代に地元の富山にあるジャズバーでウエイトレスのバイトしたことがきっかけだったんですけど、マスターから「お前も歌ってみるか?」って軽いノリで言われたから、私も軽い感じで「あ、やってみたーい」って言ったんです。でも、そこからマスターがスパルタに豹変して……。

— どんな感じだったんですか?

はな:バイトの前にお店に行って音楽理論を教えてもらったり、ピアノを叩きこまれたりしたんですけど、音楽だけじゃなくて、人生論とかでも説教されるんです。「お前は根性もない、度胸もない、甘えてばかりでダメだ!」みたいな。 大学3年の頃には木曜日担当として実際に人前で歌えるようになったんですけど、もう嫌で嫌でしょうがなかったんですよ。

はな
はな

— それでも辞めようとは思わなかった?

はな:辞める元気もなかったんです。惰性で続けてる感じになっちゃって。でも、ある日もう本当にダメだと思って、ワーッて泣きながら「1週間後に辞めます!」って。ただ、バイトは辞めたものの、就職活動もしてなかったし、歌もやめたし、廃人みたいになっちゃって。「自分って価値のない人間なんだ、もう死んだほうがいいのかな」みたいな。このままだと話がどんどん長くなるね(笑)。

— 短くまとめるので大丈夫です(笑)。

はな:それで、大学を卒業してからは塾の講師をしてたんですけど、知り合いのアマチュアバンドの方に「一緒にバンド組まない?」って言われて。最初は「そんな気分じゃないけど……」と思ったんですけど、「ちょっとだけ」と思ってやり始めたらもっとやりたくなってしまって、卒業して2年後に上京したんです。それからインターネットでメンバー募集サイトに「ギター募集」って載せたら、羊毛さん(市川のハンドルネームが「羊毛」だった)が引っかかってきて。

— なんのアテもないまま上京したんですか?

はな:そうですね。いつだったか塾の講師をやってるときに、実家でお風呂に入ってて、「このまま実家から数キロ先の塾との往復で人生終わるのか」って想像したら、すごい嫌だったんですよ。それだけいまだに記憶にあるんですよね。



僕、天才を演出しようとしてて。練習してないはずなのに、「うちの息子、弾けてる!」みたいな(笑)。(市川)

— 市川さんはいつからギターを?

市川:中3になる前の春休みからですね。父親がギターをやっていて、ベンチャーズとかグループサウンズを教えられたんです。みんながJUDY AND MARYとかHi-STANDARDをやってるときに、僕はペケペケペケみたいな(笑)。

— そこは、はなさん同様にスパルタだったんですか?

市川:いや、全然(笑)。でも僕、天才を演出しようとしてて。親からバカでかいアンプをもらったんですけど、親の車が帰ってきたらアンプを消して、練習してないフリをするんです。それで親が「この前教えたやつ、ちょっと弾いてみろ」って言ってきたら、練習してないはずなのに、「うちの息子、弾けてる!」みたいな(笑)。

はな:それはいまもあるよね。私にもあんまり練習してるところを見せないし。

市川:いまは本当にしてないかもしれない。

はな:なんじゃそりゃ!

— それも演技かもしれないですよ。

はな:もうわかんないっ!(笑)

— いまはガットギターを弾いたりしてるじゃないですか。どういう変遷でベンチャーズからいまにたどり着いたんですか?

市川:高校出て音楽の専門学校に入ったんですけど、ハードロックから始まり、ブラックミュージック、ジャズ、フュージョンとかに行って、卒業してからはいろんなバンドに入っては辞め、そのうち「エレキ、飽きたな」みたいな(笑)。なんか、だんだん弾かなくなっちゃったんですよ。自分がいなくても鍵盤の人がいたら成立するし、極論で言えば、ライブ当日にインフルエンザで休んでも、誰も困らないだろうなって。

— 本当に極論ですね(笑)。

市川:ちょうどそのときに、知り合いにアコースティックギターを売ってほしいって相談したら、「ガットギターならありますよ」って言われて。それを買って3か月後くらいに、はなさんと出会ったんです。そこでギターと歌だけの編成でやってみたら、これまでとは役割が全然違って、みんなに乗っかる側だったのが、支える側になったんですよ。それでまたギターが楽しいと思えるようになって。 はな:性格に合ってたんだよね。ベース気質というか、もともと表に出るタイプじゃないから。

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BRAND INFORMATION

羊毛とおはな

羊毛とおはな

千葉はな(Vo.)と市川和則(Gt.)によるアコースティックデュオ。2007年のデビュー以来"オトナからコドモまで"楽しめるライブは全国で話題に。2009年にNTT docomoのCMソング、2010年にはNHK「みんなのうた」、映画「さんかく」主題歌、2011年7月にはアニメ「異国迷路のクロワーゼ」OPソングに起用されるなど、音楽業界だけではなく各方面からも注目を集める彼らの音楽はまさしく唯一無二の世界。

羊毛とおはな
『LIVE IN LIVING '13』(CD)

2013年4月23日発売
価格:2,205円(税込)
LRTCD-073

1.ホワイト
2. はだかのピエロ
3. Both Sides Now
4. キリギリアス
5. Choo Choo, Ch'boogie
6. Honey Plant
7. 犬みたいな人
8. Only A Fool
9. Hyperballad
10. Sublime
11. うたの手紙?ありがとう?
12. 切手のないおくりもの

OTHER FEATURES